2007年02月18日
 ■  UDHydYjw氏作SS 運命の夏の日 雨

スーパーロボット大戦OGで萌えるスレ その122
http://game11.2ch.net/test/read.cgi/pokechara/1168864531/l50

あの名作が改訂されて帰ってきた!

運命の夏の日 エピローグ
http://suparobo.net/old/2006/09/post_495.html

注意:シリアス・重めの展開です



248 :夏の日の巨人・雨 :2007/01/16(火) 18:19:09 UDHydYjw
「私には五つ上のお兄ちゃんがいたんだ…」

夏…去年はお兄ちゃんが帰って来て素麺を一緒に食べたんだったよね…
私もお兄ちゃんの真似をして山葵を入れてみたけど駄目で、みんなで笑ってたよね…
お兄ちゃんは、それから一ヶ月しないうちにどっかに行っちゃったんだよね…
お家に手紙が届いて、お母さんが泣き崩れた時はびっくりしちゃった

「宇宙でお兄ちゃんの部隊が…」

私は最初、嘘だと思ってた…
なんかの冗談か、間違いだって…
だって、お墓にはお兄ちゃんいないんだよ…
宇宙…って広いし、きっと無事で、また、いつもみたいに玄関を開けて帰ってくるって…信じてた
だけど、お兄ちゃんはいなくなっちゃった…
呼んでも帰って来ない…手紙を書いても帰ってこない…電話をしても…
でも、お兄ちゃんのお部屋はそのまま残ってるの…
時計も動いてるし、小さい頃に買った机もそのまま、本や作りかけのパズルも…
だけど………そこにはもう来ないんだよね…
顔も見れないし、声も聞けないんだよね…大好きだったお兄ちゃん…


そして、今年も夏が来たの…

~夏の日の巨人・雨~


「バイト~っ!皿洗い終わったら上がっていいぞ~!」

夏の中華料理屋での熱気との戦いにも負けず
汗だくになりながらもあと数枚で既に彼の皿洗いは終わりそうだ

「は~いっ!お疲れ様で~す」

バイトの彼、トウマ・カノウは急いでいた 次のアルバイトまでの時間が迫っていたのだ
彼はハイスクールでやりたいことが見つからず、ハイスクールの夏休みを利用していろいろなアルバイトや、資格を会得していた
しかし彼自身、どうしても『コレ』という仕事が見つからない そのせいか、いろいろなアルバイトをやり続けている
トウマは皿洗いを終えると、鞄から新しいシャツとタオルを取り出し、職員専用のロッカーで着替えと臭い取りをすます
中華料理屋の裏口から飛び出すと、時計を気にしながら走り出した

「やばいな、確かこっちからなら、近道…うわっ!そうだった…」

普段近道を使わないせいもあり、近道は通行禁止になっていたことを忘れていた
トウマは『通行禁止』冷たくおいてあるただの看板に背をむける
今、地球…いや、太陽系はあらゆるところで戦争をやっている
幸運か必然か、この地区には軍事基地や、軍事関係の設備がまるでなく
戦闘区域に入ることはほぼなかった。トウマが夏休みのバイトでこの辺りを選んだのもそれがある
最近の戦争での被害らしき被害と言えば、2ヶ月前に近くで起きた戦闘が起きたときくらいである
この通行止めもそのときに、飛んできた流れ兵器によってなっていたのだった

「ドンパチするなら、関係ない所でやってくれよな…」

バイトまでの時間を気にして、苦い顔をしながら、時計を見て頭をかき
ボソッと愚痴をこぼした次の瞬間、罵声がとんできた

「何言ってるのよ!…何も…何も知らない癖に!!」

…12歳くらいの女の子がそこに立っていた
トウマが無視して通り過ぎようとすると、女の子はトウマの上着を掴んで離さなかった

「君…あの、先、行きたいから離して…」

トウマが言いきる前に少女の目から大粒の涙が零れ落ちる…
いきなり、目の前で泣かれ、トウマは混乱し、辺りの視線に耐えられなくなり
トウマはその少女を振り切って黙って走って行ってしまった罪悪に近いものを感じつつ…

(…なんだ?あの女の子………)


本日のバイトが終わり、日も暮れてきた
今、午後七時…
夏の日暮れは遅い…
トウマは少し気になる事があり、ある場所に向かった
『通行禁止』と書かれた看板の前にその少女は座っていた
トウマは、その少女にジュースを無言で差し出した
どうにも、どうすればいいのかが分からない…
少女は始め、びっくりした顔をしていた
それはそうだ。いきなり、昼間にただ会っただけの人間にジュースを差し出されても、反応にこまる

二人の間に無言の変な空気が流れる…

「昼間は…その、ごめんね…泣かしちゃって…」

少女は、少しポカーンとなった後、クスクスと笑い出した

「それだけで、ジュースを?」
「あ、ああ…変…かな?」
「いえ…ありがとうございます……誘拐とかじゃ…」
「ない!」

その後、軽く世間話をすると街灯がつき始める
気がつくと、辺りのイルミネーションが光輝いており、本当に戦争しているのか疑問さえでてくる
戦争中に、夜中電気がつくなど本当ならありえないからだ…
送っていこうか?と、トウマが聞くと少女は首を振り帰路についた

次の日

トウマは街の路上販売をしていた
昔からの友人に頼まれたバイトで、友人の造った趣味のアクセサリーを売っている
友人のアクセサリーは貴金属の扱いバイトにも抜かりの無いトウマも気に入っていた
それにしても、暑いの一言につきる
天気予報などで言っている、気温より体感温度はプラス5~10度上なんじゃないかというほどだ
そのため、夏場はその照り付ける太陽がやけに憎い。コンクリートから跳ね返る熱気に蝉の声さえ欝陶しい
暑さを流す雨でも降ってくれないかと願ってしまうほどだ…

「…今日はこれくらいにするか」

トウマは時計を確認し、商品を片付け、友人に返すために喫茶店に出掛けた
友人を待てども来ない。トウマのイライラが少しづつ上がっていく

「あ…お兄ちゃん…」


昨日の子がそこにいた
辺りを見ても保護者の人がいるような気配がない
トウマは不思議に思った

「…ひとりなの?」
「え?…あ…はい…」

事情を聞くと両親は近くのデパートで買い物をしてるらしいが
その事情を話し照るとき一度も、トウマの目を見なかった彼女の説明をトウマは、鵜呑みには信じなかった
トウマは、気になってたことを聞いた

「そういえば、昨日言ってた、知らないことって?」
「実は…私にはお兄ちゃんが…五つ上のお兄ちゃんがいたんです…」

彼女は寂しそうな顔をまずして
ストローで、注文していたレモネードの飲みかけをゆっくりとかき回す
カランと、少女のレモネードの氷が溶け音をたてる…

「でも…去年…戦争で…軍にいたお兄ちゃんは…」

少女の身体が震え始めた
トウマは席を立ち、その口から出てくるであろう言葉を遮った

「ゴメンッ!嫌な事…聞いたね」

二人の間に気まずい雰囲気が流れる
そこにトウマの友人が、アクセサリーを取りに大声で走ってくる

「あ、すいません…私、用事が」

彼女なりに気を使ったのだろう
少女はその場を立ち去り、デパートとは逆の方向にと走り出した

その日、トウマは、アルバイトを休んだ


(軍人さんにも家族や、友人、恋人、大切な人はもちろんいる当たり前の事だ…
そして、俺は…その軍人さん達に助けてもらってる
俺には関係ないと思ってた…いや…思うようにしてた…戦争…
関係ないわけ…ないんだ…
あんな小さな子が…それを教えてくれた……………俺は…)

布団の中でトウマは考え混んでいた…
これからの自分自身について…どうするのかを…

一週間後

トウマは少しだが変わっていっていた
困り弱ってる人を助ける…
彼はそんな人間を目指していた
だが人間、そうそう変われるものではないが…少しずつ…少しずつ…
あせる必要はない、一歩づつ確実に彼は変わっていた
あの子とはあれから一度も会っていない、たまたま会えないだけなのか…
この街にはいないのか…
やはり、あの時もご両親や、保護者とは来ていなかったのだろう

トウマはそんなことを考えながらいつものアクセサリーの路上販売をしていた…
すると、トウマの頬の近くに冷たいジュースがでてくる
トウマが「うわぁあ」と少し退くと

「お久しぶりです、お兄ちゃん」

トウマの目の前にあの子がクスクスと現れた
元気そうなその姿を見てトウマはホッと安心した

「久しぶり…最近見ないかったから…」
「夏休みの宿題してたから…日記とか」

いまだに、終わらしていないトウマにはけっこう痛い言葉である
少女は商品のアクセサリーをマジマジと見つめる

「綺麗ですね!お兄ちゃんが造ったんですか?」

トウマは首を振り、友人の手伝いのアルバイトと伝えた
少女はアクセサリーをジッと眺めている
この子は多分、本当はこういう子なんだろう…

「なにがいい?プレゼントしてあげるよ」

トウマの意外な一言に少女は首を振った

「遠慮なんかしないで…ほら、選びな」
「ありがとうございます…え~と」
「トウマ…トウマ・カノウだ」
「トウマお兄ちゃん!」

少女は食いつく様にアクセサリーを吟味していた

「そういえば…君の名前は?」
「コレかな…え?私の名前ですか?」
「そう…君の名前」
「私は…」

その瞬間だった…


多分…爆風が吹いた


気絶したトウマが気がついた時、辺りは阿鼻叫喚の地獄だった

いきなりの敵襲…

逃げ惑う人…
泣きじゃくる子供…
燃える盛る建物…

「あっ…あの子は………」

トウマは必死になって探した
頭の中ではこういう時、何故だか最悪の場面しか浮かんでこない
トウマは唇を噛みしめた…口から弱音が出てこないように…希望が少しでもあるのなら…

しかし、見つけたのは…その子の…一部………
その右上半身の手にはしっかりとペンダントが握られていた…
それは、彼女が決めたトウマとの絆になるべきだったモノ…

トウマは…声をあげて泣いた…これが戦争という現実…なのか…と
しかし、名前も知らない少女は返事をしてくれない…
そして、敵の機動兵器は破壊をやめない…
それは彼の目の前にも現れた…
トウマは既に恐怖と悲しみで動けなくなっていた

(俺…死ぬのか…?嫌だ…まだ死にたく…)
「っうぉうううううああああああぉお!!!」

何に対して発した言葉かわ分からないトウマの雄たけびが響き渡る


そこに雷撃と咆哮が木霊する

『チェストーォッ!』


トウマの眼に映るは一機の特機
彼の声に呼ばれて来たのかはわからない
巨大な日本刀を持った…夏の日の巨人…


軍の人達に誘導され、非難シェルターで一晩過ごし
街に出るトウマ…弱い自分を悔いながら…
それは夢ではなく、現実、もう帰ってこない現実
それは…既に自分の知ってた街ではなかった
彼女がいた場所にも何もなかった

…そして…雨が降った…なにも流してはくれない雨が…

トウマは空を見上げた
そして…守りたいと…誓った…心から…そう、果てなく…

8月のある日の日記…
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

変なお兄さんと会いました。
いろいろなアルバイトをしている働くお兄さんでした。
とても、優しくて、面白いお兄さんでした。
街に行って、また、そのお兄さんとお話がしたいです。
だから、早く宿題を終わらせたいと思いました。
お兄さんを見てると、お兄ちゃんを思い出して、安心します。
あんまり似てないのに、何でか分かりません。
でもこの前はちょっと喧嘩したから、今度会うときは仲直りして会えるといいなと思いました。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


~夏の日の巨人・雨~完~


投稿者 ko-he : 2007年02月18日 22:43 : スレ内ネタ:SS

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コメント

 ――バカ責任取れ、ちょっと涙腺緩んじまったじゃないかよ……

投稿者 Glock : 2007年02月18日 23:17

オリジナルキャラはほとんど知らない俺でも、感動しました。

投稿者 通りすがり : 2007年02月18日 23:30

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