2007年04月24日
 ■  zHgbtkYO氏作SS「伊豆基地桜尽し」

スーパーロボット大戦OGで萌えるスレ その146
http://game11.2ch.net/test/read.cgi/pokechara/1175437229/l50


51 :名無しさん@お腹いっぱい。 :2007/04/02(月) 00:43:51 zHgbtkYO
書いてるうちに新スレ立ってやんの。
出遅れ気味の花見ネタ。長いのでこっちで。


レッフィー19歳だったような気がするけど、ま、いっか。




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「はあ、なんと言うか…」
「ようやく落ち着きましたね」
 大きなため息とともに、テツヤとレフィーナは顔を見合わせた。
 形としては「無礼講」である花見とは言え、その言葉を額面どおりに受け取
って実行する人間が嫌と言う程揃っている伊豆基地の面子を前にしては、誰か
しらは状況を把握する・収めるために動いていなくてはならない。それが判っ
ているからこそ、彼らは花見の開催中には手加減してアルコールを口にし、
トラブルに対応出来るように努めていた。
 ダイテツのように手馴れた艦長であれば副長にその役目を押し付けてしまう
事も出来るのだが、彼らは自分たちの若さに気を遣って、あえてそれを実行し
ようとはしなかった。もっとも、副長の役割をはっきりと自覚しているショー
ンはテツヤとレフィーナのやり方に律儀に付き合い、散発的なお遊びには参加
したものの、十分に冷静さを保っていた。
 その他にも、例えばオクト小隊においてはラッセル、SRXチームにおいて
はアヤがその役割をする羽目になる。他にも厨房を預かるレーツェルや塚は当
然中締め後、会場の撤収がある程度見えるまではフル回転で目が放せない。
 と、いう訳で。
「よし、厨房もこんなもんだ」
「実にトロンベ」
 という声とともに、別ごしらえのお重を持って塚とレーツェルが戻って来た
のを合図に、会場を切り回す「ホールスタッフ」の仕事をしていた連中が、
再度集まって来る。
 テツヤとレフィーナを筆頭に、ショーン、ラッセル、ジョッシュ、アヤ、ト
ウマ、統夜。それにレーツェルと塚が加わる。
 それを確かめてから、レフィーナは深く一同に頭を下げ、こう切り出す。
「お疲れさまです、皆さん。本来なら楽しんでいただくべきお花見の会に、大
変なお仕事を押し付けてしまいまして、申し訳ございませんでした。おかげさ
まで無事終える事が出来ました」
 その言葉に、統夜が応じる。
「最初はスレイさんもこっち側の筈だったんですけどね…」
 それを受けて、トウマとジョッシュがいやに遠くを見つめながらしみじみと
呟いた。
「まあ、結果的にはあの有様だったけどな」
「ツグミさんを引き離し損ねたのが致命的だった」
「開始5分で早くも戦力外ですからね」
 苦虫を噛み潰しながらのその言葉とともに、統夜は花見中のスレイの写真を
取り出した。その写真に写されているのは、おもちゃの鼻眼鏡をかけて一升瓶
を抱えながら大股開きでクダを巻き、クスハとリオに「彼氏持ち」という理由
で説教を続けている姿。ついでに、その背後には額に「肉」を書かれたアイビ
スがゲロを吐いており、さらに話の流れを聞いてチャンスとばかりにやって来
たエイタに至っては、サングラス&ふんどし一丁の状態で胸に「ネッシーは 
いてる」と書き込まれ獅子舞を持たされた状態で轟沈されている。
「本人には内緒にしときたいのはヤマヤマなんですが」
「どうせ無駄だろうな、みんなの事だから」
 その言葉とともに、いつものように深くため息をついた統夜とトウマ。そし
て諦めを通り越して達観の域に達している表情を見せるジョッシュ。
 それを苦笑いとともに受け止めたレフィーナは、隣のテツヤに目で合図して、
次の言葉を促す。それにしっかりと頷いてから、テツヤは静かにこう言った。
「それでは、これよりスタッフ慰労会と致します。皆さん、ゆっくりと楽しん
で下さい」
 全員が、その言葉に拍手を送る。
 塚とレーツェルが、お重を慎重に展開させる。
 ローストビーフ。油淋鶏。岩魚と山女魚の塩焼き、南蛮漬け。鯛はロースト
してジェノベーゼをかけたものが一匹分。さらにもう一匹分は炊き込みご飯で
仕上げてお握りを作ってある。キューカンバーも大量に作り上げられ、これに
コールスローサラダとツナを和えた新玉葱のスライスサラダ、グリーンアスパ
ラも添えて。和食党には胡麻豆腐と菜の花の辛し和え、ほうれん草の白和えに
筍の土佐煮と春キャベツの浅漬け。とどめに太巻きはアボカド入りのものと、
トラディショナルな干瓢・厚焼き玉子・桜でんぶで仕上げたものの2種類。
 さらにラッセルが大量のビールを持ち出して来た。クラシックラガーの瓶、
ギネスの瓶、コロナの瓶。無論ライムの準備も抜かりない。
 その気合いの入りように、一同が思わず頬を緩ませる。
「ま、苦労の報酬って事で」
「皆に出したものより、ちょっと食材のグレードが上だったり、料理にも手が
込んでいたりするが、そこは内緒でな」
 レーツェルがそう言ったのに、真顔でアヤがこう応じる。
「あ、でも…少しぐらいは、マイに持って帰ってあげてもいいですか?」
 その様子を見て、レフィーナが半ば噴き出しながらこう言ってみせる。
「お姉ちゃんは心配性で苦労性、ですね」
 アヤはその言葉に、ほんの少しの苦笑いと真剣に妹を思いやっての笑顔を混
ぜ合わせた、いかにもアヤらしい表情で応じて見せた。その絶妙のブレンドを
目を細めながら見つめていたショーンが、今度は口を開く。
「さて…ブレンダーの腕で個性をまとめて美味くなる酒もありますが、今日は
ブレンドで味を出すために苦労している人たちの集まりだ。野暮は止めましょう」
 そう言いながら取り出したのがは、当然マッカランのシェリーオーク。だた
しいつもの10年ではなく18年。
「本来は25年物で行きたい所ですが、まあそれはもっと御目出度い席での事
にしましょう」
 さりげなくレフィーナの方を見ながら、ショーンが呟いた。それの意味する
所を悟って、テツヤがわざとらしい咳払いを2度繰り返し、レフィーナが頬を
染めて俯く。
 いい加減どうにかしろ、あんたら。
 誰もがそう言いたいのは山々なのだが、そこまで言うのはおせっかいを通り
越して野暮と言うものである。だからこそ、一同はそれ以上幼稚園児カップル
をいじるのを止め、思い思いに杯を満たし始める。
 そして最後に、レフィーナとテツヤがそれぞれの杯にビールを満たそうとし
たその時、である。
「おおっと」
「どうしました、ショーン副長」
「先ほど、宅配便で艦長宛てにお荷物が届いておりました。艦長はそちらをお
飲み下さい」
「わかった」
 その言葉を受けて、ショーンが取り出した一升瓶のラベルを、テツヤは声に
出して読み上げる。
「振袖・大吟醸…5年古酒!?」
「ちなみにお荷物の差出人は、ダイテツ・ミナセとなっております」
「!?」
「いるのですよ。保存に適した環境で酒を預かり、程よく熟成した後にご本人
にお返しするという粋なことをする人達がね」
 そう言いながら、ショーンは酒に添えられていた手紙をテツヤに手渡す。

『テツヤ=オノデラ殿
 君がこの手紙を見ているという事は、残念ながらワシは既にこの世の者では
無いという事になる。だがそれも天命。何ひとつ恥じる所はない。
 この酒は、君が立派な艦長として成長した頃に酌み交わそうと思い、上陸の
際に預けておいた物だ。是非とも、君にその味を確かめて欲しい。
 日本酒にも、古酒というものは存在する。冷やおろしの酒が美味いのと同じ
道理で、適切な保存状態で熟成された日本酒の味わいは、新酒のそれとはまた
違う深い味わいがある。ワシと君が出会ってから5年、その年月の意味を噛み
締めながら、信頼できる仲間と、心ゆくまで味わって欲しい。
                          ダイテツ=ミナセ』

 テツヤは目頭を押さえながら、その手紙を読み終えた。
 そして、静かに言った。
「レフィーナ艦長、一緒に飲みましょう」
「はい」
 わずかに琥珀色がかった液体。吟醸香と熟成香の交じり合った、5年という
月日が醸した華やかで、穏やかで、貴重な香り。それを胸いっぱいに吸い込み
ながら、テツヤは皆に向けて声を張り上げた。
「皆さんお疲れ様でした。乾杯!」
「乾杯!」
 心づくしの料理。良い酒。気の置けない仲間。それが在ればなんの憂いがあ
ろうか。
 だからこそ、テツヤはさらにもう一言継ぎ足した。
「トウマくん、統夜くん、ジョシュア君」
「はい」
「何か、まだ準備するものがありますか?」
「でしたら今すぐ…」
「君たちも、少しこれを嘗めなさい」
「はい!?」
「えーと、オレ達はまだしも、統夜はまだ高校生…」
「だから、『嘗めなさい』なんだ」
 その意図を悟り、ショーンが言葉を続ける。
「なに、本当に美味い酒の味を覚えておくのは、決して悪い事ではありません
よ。皆で騒いで楽しんで、それが優先で味は二の次という飲み方も確かにあり
ます。しかしそれは、酒に対して失礼だ。本当の仲間と美味い酒を美味く飲む
事は、一生の愉しみだよ。それを早く覚えるために、舌に美味い酒の味を覚え
させなさい」
 その言葉に、間違いなく今この瞬間、世界一美味い酒を飲んでいるテツヤが
深く頷く。その横顔を、レフィーナが嬉しそうに見つめる。レーツェルと塚、
そしてアヤとラッセルも手元の酒精を噛み締めるように味わい、静かに笑って
いる。だが矢面に立っているトウマと統夜は、今ひとつショーンの言葉の意味
がわかっていないような顔をしている。それも当然か、と顔に書きながら、シ
ョーンは静かに微笑んで、こう言った。
「今は判らないかもしれませんね…それはそれでいいのです。5年後、10年
後、今の言葉の意味を噛み締めてくれれば。そして、今この瞬間を思い出して
くれれば」
「…はあ」
「さあ」
 お猪口の底に、ほんのわずかだけダイテツの形見を注ぎ、テツヤはそれを3
人の若者へ手渡した。ダイテツがテツヤに繋いだ「もの」の意味を、いつかこ
の3人が、いや自分の後に続く者たちが気づき、そして受け取ってくれる日の
事を信じて。
「美味いです」
「複雑で、濃厚で、その癖華やかで」
「これが、酒?」
「その通り。これが、本当の酒だよ」
 テツヤはそう告げると、自らの杯を桜の木に向けて掲げ、そして静かに飲み
干した。

 後日、3人の若者はダイテツが酒を預けた場所を突き止め、そこでそれぞれ
一本の酒を購入し、10年後を指定して未来へとそれを託したという。それを
酌み交わす相手が誰になるのかは、本人たちすら知る由もない。
 ただ、その酒を美味く飲める仲間が周りにいてくれるような生き方をしよう。
 彼らは、そう考えていた。




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56 :名無しさん@お腹いっぱい。 :2007/04/02(月) 01:10:10 t0yl9rS7
>>51
GJ!!GJ!!GJ!!
感動した!!ダイテツ艦長カッコイイよ。味な事してくれたよ!!

投稿者 ko-he : 2007年04月24日 12:57 : スレ内ネタ:SS

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コメント

きょうちびアラドがこうへーはネタ花見すればよかった?

投稿者 BlogPetのちびアラド : 2007年04月24日 14:38

良い話が台無しだ~!!(がびーん

いや待てよ?これはこうへー殿のわn(ぷにぷになっこー

投稿者 雷精 : 2007年04月24日 15:20

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