スーパーロボット大戦OGで萌えるスレ その134
http://game11.2ch.net/test/read.cgi/pokechara/1171980105/l50
814 :名無しさん@お腹いっぱい。 :2007/02/23(金) 02:22:59 quiPg0it
微妙なムードですが、イングラム先生のSS投下したいんですがいいっすか
815 :名無しさん@お腹いっぱい。 :2007/02/23(金) 02:24:20 w5IaWd0y
どんとこい超常現像
816 :名無しさん@お腹いっぱい。 :2007/02/23(金) 02:24:30 YACbRFhb
さあ!さあさあさあ!
817 :名無しさん@お腹いっぱい。 :2007/02/23(金) 02:26:13 quiPg0it
では、参ります。
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818 :異世界からの来訪者 :2007/02/23(金) 02:28:05 quiPg0it
BAR・ヒリュウ。
絞られた照明の中で、一人の男が黙然とグラスを傾けている。
カウンターの中、そこからわずかに離れた位置では、ショーンがやはり黙々とグラスを磨いていた。
(……やはり、こうでなくてはな)
イングラムは内心しみじみと呟いた。
ここ最近、妙な評判が立ってしまったせいでゆっくり飲むこともできなくなっていた。
さりとて、そのような理由で馴染みの店を諦めるというのは彼のプライドが許さないし、それにここ以上に雰囲気が良く、気の利くマスターが居る店などそうそうあるとも思えない。
今夜はショーンも彼の内心をよく分かっていると見え、必要最低限の言葉以外は一切話しかけてこなかった。
――平穏を楽しみながら彼がグラスの中の琥珀の液体をもう一口含んだちょうどその時、バーの重い扉が低い音を立てて開いた。
気にしすぎだ大丈夫だ今夜は何もない単なる無関係な客に違いない。
心に浮かんだ嫌な予感を打ち消したイングラムだったが、そんな彼の内心をあざ笑うかのように、入ってきた客は一瞬店内を見回した後まっすぐ彼の元に歩み寄ってきた。
「………」
渋々、実に渋々と、イングラムは客の顔を見る。
引き締まった長身に、ぴったり合った黒い服。肩には短めの、風変わりなケープのような白い服を羽織っている。髪は燃えるような赤だった。強い光を宿した瞳の精悍な表情。全体の雰囲気は、鍛え上げられた闘犬を思わせる。
実際に会ったことはないが、記憶の中にはある顔だった。
「イングラム・プリスケンか?」
青年が口を開いた。
「……自分の名も名乗らずに人に尋ねるのが、修羅とやらの流儀か」
口調がいささかとげとげしくなっていたのは自覚できたが、致し方なかった。
「……すまん。フォルカ=アルバーグという。俺のことを知っているのか?」
「連邦のアーカイブでな。お前たちのデータは一通り見せてもらっている。あくまで一部だろうがな」
「ならば話は早い。……実は、ここに来れば相談事に乗ってもらえるという話を聞いてきた」
知らず、右手の中のグラスを強く握り締めていた。異世界の住人にまでそんな話が広がっているというのか!
「お、お前たち異世界の人間の悩み事とやらに答えられるとは限らんがな。とりあえず座ったらどうだ」
動揺を隠すためにさりげなく会話を続けたが、言ってから後悔した。地球人類の年齢が適用できるのか分からないが、目の前の青年は成人しているかどうかは微妙な外見だ。飲酒を勧めてよかったのだろうか。
「何になさいます」
スツールに掛け、色とりどりの酒瓶が並ぶバックボードを興味深そうに見やっているフォルカにショーンが問いかける。
「プロテイン、ミルク割りで」
(………っ!!)
イングラムは危うく口の中の酒を噴き出すところだった。なんなんだこの男は。それとも修羅の世界にはそんな名前の酒でもあるというのか。
「ホエイ(乳清)とソイ(大豆)がございますが」
「ホエイで」
「かしこまりました」
しかし、ショーンは全く動じた様子もなくオーダーを受けると、どこからかプロテイン・シェーカーを取り出してプロテインの粉末と牛乳を注ぎ込み、普通のシェーカーと同じように鮮やかな手つきでシェイクし始めた。
「………」
イングラムは目の前の光景を理解しようとするのをやめた。それよりも今は一刻も早くこの異常な状況をなんとかしたい。
「……で? 相談事というのは何なのだ」
「………」
しかし、フォルカはにわかには口を開かなかった。難しそうな顔で、目の前のグラス(プロテインのミルク割り入り)を眺めている。
「どうした?」
「……それが、俺にも何を聞いていいのか分からないんだ」
「……はぁ?」
ついに気の抜けたような声を出してしまった。突然押しかけてきた挙句、何を言っていいか分からないと来る。イングラムは怒りや当惑を通り越して呆れてしまった。
そんなイングラムを見て、フォルカはやや慌てたように続けた。
「いや、もちろんここに来たのには理由がある。順を追って話すので、とにかく聞いてくれ。
……俺の義兄――親代わりであり、師でもあった男だが――は修羅軍で筆頭将軍を務めている。技量人格ともに申し分なく、王の信任も厚い。
そして、その義兄には右腕ともいうべき将軍がいる。こちらも有能で忠実、少なくとも任務の上で齟齬があったという話は俺は一度も聞いたことがない」
「連邦と違い、上層部の人材に恵まれていて結構なことだな」
つい本音が出た。
「しかしだ。俺の友人に言わせると、この二人の関係には問題があると言う。今は表面上何ともないように見えるが、遠からず爆発する可能性があるそうだ。部下の将軍の方は俺が押さえておくから、お前は閃光将軍どのの方を何とかしろ。兄貴なんだろ。と言われた」
「………」
「言われたのはいいが、先ほど言ったように俺の目には何も問題があるようには見えん。それで考え込んでいたら、ここであんたに相談したらどうだ、と言われた」
「ちなみに、誰にだ」
「金髪の女だ。確か、連れに『エクセレン』と呼ばれていたな。『悩みがあるなら、BAR・ヒリュウのイングラム先生に相談したら? 黙って座ればピタリと当たる、って大評判よん』と言っていたんだが……」
……あの女っ! もう一度拉致って洗脳しなおしてやろうか!!
またしてもイングラムは強くグラスを握り締める。手の中で分厚いガラスが小さくきしんだ。
「あいにくと、その程度の話では何がなんだかさっぱり……」
言いかけたところで、彼の頭の中のデータベースに引っかかるものがあった。
「フォルカ。確認したいんだが、その部下の将軍とやらは、女だったな」
「そうだ。よく分かったな、修羅の女将軍は珍しいのに」
「いや、だから記憶に残っていたんだろう」
と、すると……
イングラムはある一つの仮説に思い至った。目の前のこの男の親代わりだったというのなら、本人もやはり。
「お前の兄は、女にはだらしない方か?」
「まさか。アルティス兄さんは清廉で高潔、女などには目もくれずにひたすら自らを鍛え続ける修羅の中の修羅だ」
「では、その部下の女将軍は?」
「メイシス将軍も優秀な修羅だ。任務が無い時も、しょっちゅう家に来ては兄さんや俺たちのために食事の支度をしてくれたり、身の回りの世話をしてくれている。彼女のお陰で、兄さんは安心して修行に打ち込めると言っていた」
「……もう一度確認するが、お前の兄は女には興味が無いんだな?」
「くどい。兄さんは、そんなことに惑わされるほど柔な精神の持ち主ではない」
こんな奴らばかりなら、修羅の世界が滅びかけたというのも分かるような気がした。
「あー、まあその、何だ。この場合、やはりお前の兄の方に問題があるような気がするな」
どことなく歯切れの悪い物言いになっているのは、フォルカに説明して理解させる自信がなかったからだ。
しかし、予想に反してフォルカが感情を損ねた様子はなかった。
「俺の友人もそう言っていた。何が悪いんだ? 本当に兄さんに原因があるなら、俺が、場合によってはフェルナンドの力も借りて兄さんを諭してみせる」
「あー、……」
それはどうだろう。そもそもこの男からして男女の機微など理解できているとは思えない。まさかおしべとめしべが、から説明するわけにもいかないではないか。
「そうだな…… お前やお前の兄は、修羅としての務め、自分を鍛え上げることのみを人生の目的にしているようだが…… 人が生きて行く上では、他にも考えなくてはいけないことがあるのではないかな」
「………」
遠回しな物言いだが、フォルカは神妙に聞いている。
「それから、人と人とのつながりは、任務だとか組織上の立場だけで割り切れるものではない…… そこにいる人物が立派であればあるだけ、それ以上の絆が生まれることもあるだろう」
よりによってこの俺が、こんな台詞を吐く日が来ようとはな。内心自嘲しつつ、彼は言葉を続けた。
「話を聞いただけだが、お前の兄は修羅としての定めとやらに囚われすぎているような印象を受けるな。たまには戦いを忘れ、自分が普段、周囲の人間にどれだけ世話になっているかということを考え直すような機会をもつというのも良いことではないかな」
どれだけ理解されたかはともかく、彼としては最大限のヒントを与えてアドバイスを終えた。修羅の筆頭将軍、アルティスとやらはなかなかの人物と聞いている。自分の弟に諭されれば自ずと悟るところもあるかもしれない。
「……分かった。感謝する」
「そうか。分かってくれたか」
我知らずちょっと安堵して、イングラムは僅かに残ったグラスの中の液体を飲み干した。しゃべり続けて喉が渇いていることを見越しているのだろう、ショーンが絶妙のタイミングで次の一杯をサーブする。
「……そうだな。修羅といえども戦いに生きるばかりじゃいけないんだ。傷つけあうためでなく、大事な人を守るために生きる。俺はそれを、彼らに教わったんじゃないか」
拳を握り締め、フォルカは呟いている。どうやら、イングラムが考えていた以上にフォルカの心の琴線には触れるところがあったようだ。
「……兄さん! 兄さんが間違っているなら、この俺が兄さんの考えを正してみせる」
「そう、その意気だ。しっかりやれ」
「……この俺の、この拳で!!」
……だぁぁぁーーーーっ!!!
イングラムは叫びだすところだった。目の前にあるのがカウンターでなくちゃぶ台だったら、確実にひっくり返していたはずだ。
「イングラム、感謝する。おかげで吹っ切れた」
「……そうか。それは何よりだ。俺も役に立てたようで嬉しいよ」
呆然と呟くイングラムをよそに、フォルカは意気揚々と立ち上がった。
「今日のところはこれで失礼させてもらうが、いずれ改めて礼に……」
「いや、それには及ばん。悩んでいる人間に一杯奢って、愚痴を聞いただけだ。俺の仕事は軍人であって、カウンセラーではない」
「しかし、それでは」
「強いて言うなら、俺が相談に乗ったということを誰にも言うな。これ以上一人の時間が邪魔されるのはかなわん」
「………」
フォルカはまだ何か言いたげだったが、やがて黙って一礼するときびすを返した。
「……そうだ、フォルカ」
「何だ?」
振り向いたフォルカに、イングラムは尋ねた。
「お前に、兄のことを考えさせたという友人…… 名は何と言う?」
「アリオンだ。“自由戦士”を自称する、気ままな男だが」
「……その男、おそらく見た目ほど自由でも気ままでもなく、お前には考えが及ばんほど苦労していると思うぞ。よろしく言っていたと伝えておいてくれ」
「……? 分かった、確かに伝えよう」
そう言い残すと、フォルカは店の外へ出て行った。
気がつくと、目の前に新しい一杯が置かれていた。
「マスター。頼んだ覚えはないが」
「私からのサービスでございます。いつもいつも、お疲れ様でございますね」
「……柄じゃないんだがな、まったく」
苦笑すると、グラスを手に取る。しかし、最近では、以前のように人の話を聞いた後に苛立ちと自己嫌悪を感じることが無くなっている事を、彼も認めざるを得なかった。
その後修羅の閃光将軍と氷槍将軍の仲がいささかでも進展したかどうかは定かではない。しかし、自由戦士を名乗る修羅頭は、初めて自分の苦労を理解してくれる同士が現れたことを天に感謝したという。
-おわり
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822 :名無しさん@お腹いっぱい。 :2007/02/23(金) 02:32:11 quiPg0it
終わりです。キャライメージ壊してないといいけど。
書き上がっていざ投下しようとしたら修羅の燃えSSがタイミングよく(悪くか)
投下されていてどうしようかと思いましたよ。
823 :名無しさん@お腹いっぱい。 :2007/02/23(金) 02:41:58 YACbRFhb
うおっ、いいSS
824 :名無しさん@お腹いっぱい。 :2007/02/23(金) 02:50:57 eVF7p+OK
おぉ、微妙にショボ-リしながら戻ってみれば・・・・
帰って来てよかった・・・GJなSSに会えて・・・・
825 :名無しさん@お腹いっぱい。 :2007/02/23(金) 02:55:38 47hv6t7R
超GJ!
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コメント
アリオンよかったねアリオン
そして特命隊長イングラムの苦労はいつまで続くのかwww
投稿者 Anonymous : 2007年03月22日 12:52
無論、死ぬまで
投稿者 サバ : 2007年03月22日 19:03
死んでも久保の背後霊になり成仏出来ないのでは?
投稿者 死神熊さん : 2007年03月22日 22:49