スーパーロボット大戦OGで萌えるスレ その123
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277 :100スレ目>>87 :2007/01/20(土) 15:43:48 ijeQpQsx
流れは読まずに投下。
宇宙刑事セイダー!
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「なんじゃ」
つまらなそうにその老婆は呟いた。
「せっかく呼ばれて来たというのに、ただでさえ少ない念動力者がさらに減ったのか」
この老婆、名をアギラ・セトメという。
「別に潰したわけではない。アレが勝手に力を失っただけだ。こちらを責めるかの台詞は止めてもらいたいな」
「フン、どうだか。お前さんたちの半端な処理故かも知れぬぞ」
じっと押し黙る、古林賢三。
「ともかく、ワシがここに来た以上下手なことをしてせっかくのサンプルどもを減らしてくれるなよ?」
「それはこちらの台詞だ」
ここは特殊脳科学研究所。通称特脳研と呼ばれている。
内部を知りながら部外者である数少ない者たちは、人外の力を持つバケモノを研究する狂人たちの巣などと呼んでいた。
宇宙刑事セイダー
第一話 警護対象! 女の子?
「え……?」
突然の言葉に伊達雪子は固まった。
いつものように所内の個室から連れ出され、いつものようにラボへ向かうものだと思っていたら、所長室とやらに連れて行かれ、いきなり次のように言われたのだ。
「これまでの研究への協力、ご苦労だった。これ以降は、自由にしてくれてかまわない」
「え……?」
何を言われているのかわからないと言う顔の雪子だった。
彼女の父親はどうしようもない人間で、雪子が五歳の頃母はこんな父に愛想をつかしたのか、蒸発してしまった。
それから五年間、八つ当たり的に父に殴られ、時たまやってくる借金取りにおびえながらも、隣人の助けもあって、どうにか生きていたが、雪子が十歳の頃、政府のとある研究所の人間と名乗る者たちがやって来て、自分たちの所へ来ないかと言われた。
……日々殴られる、こんな場所よりはマシだろうと頷いて、ここへやって来た。
渋った父も彼らの見せた大金にあっさりと応じ、翌日には既に施設に住んでいた。
番号で呼ばれ、実験体扱いされ、栄養バランスは取れているものの味気無い食事を与えられていたが、貴重な実験体を傷つけるなと言うお達しか、暴力に怯えることは無かったし何よりもそこには友達がいた。
自分の一つ上のジェニファーや二年前にやってきた舞。
彼女たちは紛れもなく家族と呼べる人たちだと、雪子は思っていたのだが……。
来た時と同じく、有無を言わさぬ勢いで荷物をまとめさせられ、その家族たちに挨拶することも出来ぬまま、雪子は既に敷地の外にいた。
「あ……」
振り返っても、重苦しい門が鎮座しているだけであった。
掛けたかった言葉も既に遠く、仕方なく雪子は歩みを進めた。
さながら手切れ金のように渡された金は相当な額がありはしたが、雪子にとっては大した意味を持つものではなかった。
その金を使って、タクシーを拾い幼いころの記憶を頼りに古びた借家にたどり着く。
意を決してドアノブを回すが、鍵がかかっていた。ちょっと拍子抜けすると共に、どこか安堵する自分がいる。
「どうしよう……」
「そこの家の人なら居ないぜ」
どこかのスーパーの袋を下げた、血色の悪い青年が声をかけてきた。
「え?」
「俺がここに来る前だけど……半年ぐらい前に家賃滞納しすぎて大家さんが入ってみたら他殺体で転がってたそうだ」
懐から出した鍵で自室を開ける青年。
「死後一ヶ月は経過してたとか何とか……借金がらみのトラブルってことで決着付いたそうだけど」
念のために名前を尋ねるが返ってきた名前は間違いなく父のものだった。
……どうしよう。
どれだけ暴力を振るわれても、理不尽な目に会わされても、結局自分には父しか居なかったのだ。それ以外の世界は知らなかったのだ。
自分に世話を焼いてくれたおばさんがいたはずの部屋は、今しがた青年が入って行った部屋で表札が変わっていた。
……自分は、どうすればいいのだろう?
敷地を出て、歩き出す。……宛は、無い。
子供たちが自分の脇を走り抜けていく。それを目で追って、首を捻った。曲がり角を曲がろうとしたところで、先頭を走っていた子供が急に立ち止まり、そして後ずさった後こちらに向かって全力疾走してきたのだ。――悲鳴を上げながら。
異変を感じたときには、危機はそこに迫っていた。
「アレだ!あの小娘だ!」
刺々しい衣装を身に纏い、角を生やした赤い大男が自分を指差していた。それに従い、走り出すさらに大きい人影が多数。自分の二倍はあるか。
「っ!」
直感的に反対側へ走り出す。それを追う手勢の気配を感じながら。
自分を追う理由など一つしかあるまい。『あの』施設に居たのだから。だが……
(なんで!?なんでよ!私は、私にはもう力なんて残ってないのに!)
ずっと狭い施設に居たせいでまともに動く体ではなかったが、自分に秘められていた力ではなく生き物の直感が告げる。
捕まるな。生ある者の尊厳すらも削ぎ落とされるぞ、と。
だから走るのだ。早鐘のように打つ心臓を押さえ込み、棒の足を気力で動かして――
左腕を捕まれ、振り払おうとした右腕を押さえ込まれ、軽く雪子は持ち上げられた。
「イヤァッ!離してっ!」
「あまり手間を取らせるなよ」
両腕でつるされる形になりながら赤の男の目の前に連れて行かれる。
「私を、どうするつもりなのよ!私には、力はもう無いのよ!」
「知るものか。俺とて不本意なのだ。念動力者ならともかくお前のような力を失った小娘にまで俺ほどの者を差し向けるとは……ゴード様も何を考えておられるのやら」
忌々しげに舌打ちをする。
「ともかく引き上げるぞ。こんなつまらん任務で奴らに嗅ぎ付けられたら厄介だ」
「そいつは残念だったな、ズィーブ!俺ならもうここにいるぜっ!」
どこからとも無く声が響く。
「な……くそっ!もう来たか!」
雪子をつるし上げている二人の戦闘員が一瞬ビクンと震えるとその手が緩み、雪子の体が落ちる。
「キャァッ」
「っと、ごめんよ」
倒れる戦闘員の間、尻餅をつく寸前で雪子は抱きとめられた。
「怪我は無いか?済まねえな、もっと早く来る予定だったんだけど……」
目を開けると、自分を心配げに覗き込む優しそうな青年の顔があった。
「は……はい。大丈夫……です」
「くっ……何としてもあの娘を奪回しろ!こんな任務をこなせないとあっては後々までの笑いものだ!」
ズィーブの号令一下、戦闘員が突っ込んでくる。
「へっ!この俺がそう簡単に捕まるかよっ!」
雪子を抱きかかえたまま、踵を返し住宅街の路地を駆け抜ける。
進行方向に先回りした戦闘員の頭を踏み台にして、メタリックなサイドカーつきのバイクに跨り、サイドカーに雪子を乗せる。
「飛ばすぜっ!」
若干空回りの音を上げた後、バイクは勢い良く走り出した。
「ここまで来れば、ひとまず大丈夫かな?」
今は使われていない工場の跡地、雪子を乗せたバイクはそこへ来ていた。
「あ……助けてくれて、ありがとうございます」
ようやく、それだけ言う。
「いや、こっちこそあんなギリギリまで助けに行けなくてすまねえな」
頭をかきつつ、申し訳なさそうに彼は言った。
「あの……さっきの人達は一体……それにあなたは?」
「あいつらは超空間犯罪組織ゴードス。俺は……まぁ、あいつらをぶっ潰すために居る正義の味方さ」
「ゴードス……」
口でその名を反芻する。
「あいつらが君を狙ってるって情報が入ったんで、急いで行ったんだけど途中で別働隊に鉢合わせちまってな。それにしてもあいつら、君みたいな女の子を狙うなんて何考えてるんだか……」
「多分、私の力のせいよ」
「力?」
こくりと頷く雪子。
「私がいた研究所では念動力って言われてたわ。他に考えられない」
「それじゃあ、連中はそれを狙って?」
「ええ……いえ、待って。確か、あの赤い人は私が力を失ったことを知っていた口ぶりだった……」
「力を失ったって、そんな事があるのか?」
「判らないわ。元々念動力者だって多いわけじゃないもの。でも……そう、あの人よりも偉い人からの命令でしぶしぶ私を捕まえに来たような事は言ってたわ。私に関わるぐらいなら、他の念動力者を狙ったほうがいいのにって」
「ちょ、ちょっと待ってくれ!」
あわてて言葉をさえぎる。
「他にもいるのか!?その、念動力者ってのが!」
「え、ええ……私の居た研究所に……他に何名か」
「場所、教えてくれ!」
腕の端末から立体映像を空間に投射して地図が開く。あそこから一歩も出たことは無かったが……多分、この辺りだっただろうと家に至る道筋を思い出しながら指し示す。
「くそっ!なんてこった!ズィーブの奴!」
「きゃっ!」
エンジンをふかし、加速するバイク。
「さっき俺が戦った別働隊は、そこを狙ってた一部に過ぎなかったんだ!早くしないと、君の居た研究所の皆が連れ去られちまう!」
「ふん、塵のような戦力だ。地球人どもはこの研究の重要性を理解しておらんようだな……」
戦闘員たちに特脳研を攻め立てさせている後方でズィーブはにんまりと笑った。そこで部下の一人に呼びかけた。
「あの小娘の行方は?」
「す、すみません。未だに足取りは……」
「愚か者め。捜索範囲を広げろ!宇宙刑事が動いているのだぞ!」
「ハッ!」
下がっていく部下。そこでゆらりと空間がゆれ、人影が現れた。
「ズィーブ」
「これはゴード様……」
恭しく頭を下げる。
「首尾はどうか」
「ご覧のとおり、もはや研究所はほぼ我らが手中に落ちたも同然……」
「それであの娘は?」
「は……宇宙刑事の邪魔が入りましたが、じきに確保できるでしょう」
「ふむ……僥倖、僥倖」
仮面の上から顎を撫でながらつぶやく。
「しかしゴード様、あのような娘をいかがなさるおつもりなのです。念動力もありはしません」
「…………」
「ゴード様!」
「……良かろう。教えよう」
幻影のゴードが遠くを見つめる視線に変わる。
「夢を見たのだ」
「ゴード様の……予知夢ですか」
「そう……あの少女の産む子が、神となるのだ……」
「神……ですか」
「信じていないようだな」
あわてて否定の言葉を述べる。
「い、いえ……ゴード様のお力はよく存じております。しかし……」
「神などおらぬ、か」
そこでふっと仮面の下の顔が嗤う。
「私の言い方が悪かったな。汎神、とでも言うべきか」
「汎神……ですか」
「そう。バルマーではアウグストゥスとも呼ぶ、運命すらも律しうる、正に神に近しい存在だ」
「運命の……調律者!」
試すようにズィーブの顔を見る。
「そんな者に、生まれたときから私への忠誠心を植えつけたらどうなると思う?」
「それは……正に力!ゴード様の絶大なる力となりましょう!」
「それ故に、私はあの娘をも」
そこで幻影を貫通する光。
「ズィーブ!」
その光の根源にズィーブは宿敵の姿を認めた。
「セイダー!」
「向こうからやってきたようだな……よいか、なんとしてもあの娘を手中に収めるのだぞ」
「ハッ!」
立ち消えていく幻影に最後に一礼し、向き直る。
「今すぐ攻撃を中止しやがれ!」
「ほざけ!それでわざわざこんな所まで来たか!あの娘はどうした!」
「こんな危ないところに連れてこれるかよ!」
狙い撃ったビルから跳躍し、着地する。
「ふ……どのみち近くに隠れているのだろう。貴様を排除してからゆっくりと探すとしよう」
「やれるもんならやってみやがれ!昇華!」
亜空間から照射された粒子が固体化していき、次の瞬間には全身を宇宙刑事たちの愛用する装攻強化服に身を包み、そこに立っていた。
「宇宙刑事、セイダー!」
ズィーブがバスターソードを抜き放ち、構える。
「行くぞ、セイダー!」
「きやがれっ!ダァブル・リヴォルヴァー!」
シリンダー式の二挺ブラスターを構え、相対する。
「おらおらおらぁっ!」
「ふん!」
撃ち出されるビームを次々と切り払っていく。
埒があかないと見たか、二挺拳銃を引っ込め、セイダーも愛用の剣を出す。
「メタリック・ブレイド!」
甲高い金属音を響かせ、交わる二本の刃。
「踏み込みが甘い!」
力押しで振り切られ、ばっと後ろに飛ぶセイダー。前屈体勢に振り下ろされる刃を横に避け、ズィーブが構えなおすより先にその切っ先が腕の付け根に奔る。
「うぬっ!」
「薄皮っ!」
決定打には程遠いことを悟り、舌打ちを一つして距離をとる。正面からぶつかってもパワー勝負は出来ない。再び打ち込まれてくる避けようのない一撃を受け流して、再びカウンターを狙うがこちらは切り払われた。
「踏み込みがあまいっ!」
切り払われ、流れる剣持つ右手を捨て置き、左手はリボルバーのトリガーを引いた。
「ぬぐぅっ!」
ひるんだ隙を突き、さらにもう一太刀。刺さるブレードはそのままに右手もリボルバーを握り締め、装填分が空になるまでトリガーを引き続けて距離を置いた。
「どうだっ!」
「ぐ、ぐうぅ……」
膝をついたズィーブ。体に空いた穴を押さえて、呻く。
「ふ……ククク……ハハハ!」
「何がおかしいっ!」
「人手不足が貴様の弱点よ!セイダー!あれを見ろ!」
と、指差す先にはビルの上で二人の戦闘員に両脇を抱えられた雪子の姿。
「なっ……!」
「どこに隠していたか知らんが、わざわざ連れてきてくれるているとはご苦労だったな、セイダー!」
「く……くそっ!」
「あの娘さえ手に入れば、もはや貴様などに用はないわ!撤収だ!」
「ま、待ちやがれ!」
異次元空間を開き逃亡しようとするズィーブを追ったが、それよりも先に凄まじい衝撃波が両者を襲った。
「ぐあああああ!?」
「うわああああっ!」
研究所からのその衝撃波で全てが吹き飛ばされた。
「っくしょう……」
頭を振り、瓦礫からはい出る。
「一体……何が……」
辺りを見回して愕然とした。そこら一体が荒れ地と化している。
「……そうだ!あの女の子は!」
あの時連れ出されていたビルは、あちこちひび割れているが倒れては居ない。少なくともビルの倒壊に巻き込まれて……という事は無さそうだ。
ズィーブの方は見あたらないが、気絶していた自分にとどめを刺さなかったのだからどっかで気絶して居るんだろう。ならば保護対象の安全の確保が最優先だ。
愛車を呼びこんで加速を付けた上にブースターと重力制御装置を使って一気にビルの屋上まで跳び上がる。
「いた!」
気絶している雪子と、先程押さえつけていたらしい戦闘員が二人。先程の衝撃波で気絶しているらしいが生きている。
ひとまず戦闘員の方には電磁錠をかけて置き、雪子を助け起こす。
「大丈夫か!?」
「う……ううん……?」
頬を軽くたたかれて雪子が目を覚ました。
「あ……」
「良かった……どっか痛かったりしねえか?」
「大丈夫……です」
ゆっくりと上半身を起こした。
「何が起こったんですか……?」
「わかんねぇ……ただ、君の居たっていう研究所が吹き飛んだみてえだ」
「!みんなは!?」
あわててビルの端によって、見下ろすと既に消防車等が集まっていた。
「あいつらが何かしたのかもしれねえけど……すまねえ」
強化服に覆われた顔は見えないが、セイダーは目に見えて落ち込んでいた。
「…………」
一方の雪子は別のことに気を捕らわれていた。
(あの衝撃が来た時感じた念……舞のモノに似ていたけれど……)
あれを、彼女がやったのか……。
「セイダァァァアアア!」
怨嗟の叫びに、雪子を庇うように立つセイダー。
「念動力者の確保をしくじり……その娘までも奪われる訳にはいかん!」
セイダーと違い満身創痍の体で現れたズィーブ。先程までの戦闘のダメージに、あの衝撃波で更に傷が増えている。
「うっせえ!手前勝手な都合で何ぬかしてやがる!」
「ゴード様……なにとぞ……貴方様の哀れな僕に、お力を!」
世界が、変質する。
ビルの屋上がまるまる包み込まれ、そこは現界から切り離された。
「きゃあ!」
「くっ!デューム空間!?」
ゴードスの者達がその力を十二分に発揮できる空間へと二人は引きずり込まれていた。
『ふ……くくく……ははは……!この力、必ずや勝つ!』
人間に近かった外見は変貌を遂げ、その姿はさながらキメラ(合成獣)か。
「ち……!次元空母!ディメンプレスト!」
辺境宙域に派遣される宇宙刑事にのみ所有を許されている多次元潜行型の自身の移動手段であり要塞である船を呼び込む。
『呼んだか』
搭載されている人工知能の合成音声が問う。
「この子を連れて、隠れててくれ。後は俺が決着を付ける!」
『了解した』
ハッチが開き、その中に雪子を連れる。
「あ!セイダーさん!?」
「そこにいれば安全な筈だ。ちょっと、待っててくれ?」
ハッチを閉じ、ディメンプレストは他次元へと姿を消した。
『逃がしたか……?まあいい、この空間からならば追跡は容易だ。貴様を倒した後でゆっくりと探し出してくれる』
「ぬかせっ!」
リロードされている二丁拳銃を抜き放ち、発射(シュート)、発射、発射。
ズィーブはほんの少し仰け反ったモノの、すぐさま不敵な笑みと共に持ち直す。
「っ……毎度のごとくバケモノがっ!」
『そんな豆鉄砲で、どうにか出来ると思っているのか!』
カッと目がきらめき、放たれる光線が強化服の表面を焼く。
「ぐあっ!」
はじき飛ばされ、あわてて態勢を取り直す。損傷率……先程の戦闘からの蓄積で20%。問題ない。まだいける!
「こいつならどうだ!メタリック・ブレード!」
ズィーブの爪と競り合い、打ち合う。
「はっ、たっ、うおりゃあ!」
「ふんっ、ぬうんっ、でぇりゃあ!」
甲高い金属音が鳴り響く中、一瞬セイダーの懐ががら空きとなった。
「そこだ!」
「うわぁぁぁっ!」
凶暴な爪がアッパーの動きでセイダーに炸裂した。
ゴロゴロと転がる所への追撃を辛うじてかわす。
「くっそ……!」
損傷率は今ので50%を越えた。否、装甲を突破して体にまでその爪は到達していた。
バックステップに継ぐバックステップで、攻撃をやり過ごす。
「ハハハハハ!逃げてばかりではどうしようもないぞ!」
「っぬかせぇっ!」
振り下ろされる爪を切り払って一気に距離を置いた。
「メタリック!ブレェェィドッ!」
刀身に左手を這わせ、エネルギーを伝播させていく。
緑色のエネルギーを纏うブレードを左下へ構える。
「セイダァァァ!」
「うおおおおお!」
上から斬りかかってくるズィーブを、左下から切り上げる!
セイダーの渾身の一撃は、見事にズィーブの体を断ち切っていた。
分断した体が自分の左右に落ちる。
「やっ……たぜ……」
それを目にして安堵し気が抜けたのか、それとも多量の出血からか、セイダーはゆっくりと意識を失った。
うっすらと目を開く。
見慣れたディメンプレスト内の自室、ベッドの上だ。
「……いつの間に……」
「あ、起きましたか?」
ベッドの脇に、雪子の姿があった。
「あ、君は……」
『感謝しろよ、セイダー?気絶してる間、彼女がお前を世話してくれたんだからな』
ディメンプレストのメインAI、レイタスが言う。
「そうなのか……ありがとう。助かったぜ」
「いいえ。私も助けてもらったから」
首を振り、笑顔を見せる。
「そっか」
こちらも、笑顔を返した。
「あ、それで、レイタスさんに教えて貰いながら作ったんですけど……食べますか?」
と、雪子の持ち上げた盆の中には料理が並んでいる。
「お、美味そう!」
「初めて作ったから味は保証できませんけど……」
ずっと施設にいた彼女にとって、料理は初めての経験だった。
『安心しなよ。セイダーみたく、俺の言ったとおりに作ったはずなのにろくなモノが出来あがらねえ奴より、ずっと筋はいいぜ?』
「うっせー!」
室内のカメラに向かってそう怒鳴り、料理を口に運ぶ。
「……どう?」
「うん、美味い!」
にぱっと笑顔。そのまま一気に食べてしまう。
「ふぅ……いやぁ、悪いな。助けたはずだったのに、ここまでしてもらって。送るよ。君の家は?」
ふっとそれまでとはうってかわって、落ち込んだ顔をする。
「あの……私、行くところが無くって……」
しまった、と自分の迂闊さを呪った。
彼女が居たという施設は、自分の目の前で破壊されたじゃないか。
「あ~、それじゃあさ。ここに居ないか?」
「え?」
苦し紛れに告げた言葉だが、これはなかなか名案ではないかと考える。
「君を狙ってた連中がまた来るかもしれないし、そんな時他の所にいたら対応しきれないだろう?」
「あの……迷惑じゃない?」
「い~や、全然!君がここに居たくないんならともかく、そうでないなら居ていいぜ。というか居てくれ。そんで出来れば飯作ってもらいたいな~なんて……」
たはは、と後頭部を掻きながらそんな調子のいいことを言う。
『プロポーズか』
冷徹なAIのツッコミ。
「ち、違うって!」
顔を赤らめて否定する青年。
そんな様子を見ていて吹き出してしまった。
「ええ。そうさせてもらっていい?プロポーズは考えさせてもらうけど」
「い、いやだからプロポーズじゃなくて……」
「私は雪子、伊達雪子。よろしくね?セイダーさん」
ハッとしたようなセイダーの顔。
「伊達?」
「ええ。伊達雪子」
『へぇ、こいつは奇遇だな?セイダー』
「う、ああ……」
「?」
何のことなのだろうか。
「俺の……地球潜入名も伊達って言うんだ。伊達隆(だてたかし)……」
「っ…………」
これまでの会話の経緯から押し黙ってしまう二人。
異様に自己意識の大きいAIは、初心なことと思ったとか何とか。
「あっ、改めてよろしくな?雪子」
「はい……隆さん」
セイダーの方から差し出された掌だが、どちらもあらぬ方向を向いていて視線が絡むことなく握手は交わされた。
お互いに、その暖まった手を感じながら。
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279 :名無しさん@お腹いっぱい。 :2007/01/20(土) 15:49:15 dH2sSUj0
>>277
大作GJ!
これ見てて思ったんだが、ユキコママンとJガールズって気が合いそうだな。
290 :名無しさん@お腹いっぱい。 :2007/01/20(土) 17:00:18 WbAvCKW2
>>277
読み終えた
泣いた
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コメント
(ナレーション)
――未来へと繋がる、今はまだ小さな希望
この地球(ほし)の明日を護る、大いなる鍵
だが、平和を乱し世界の覇権を求める魔の手は
既にこの世界にも迫りつつあった――
「昇華!」
シャキーン!(←効果音)
「宇宙刑事、セイダー!!」
主題歌は串田アキラ氏を希望するのも私だ。
投稿者 Anonymous : 2007年02月24日 01:22