テツヤ=オノデラって
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811 :それも名無しだ :2006/07/03(月) 00:18:44 jy+/KG/t
旧OG萌えスレにレフィテツSSがあるので紹介しておく
昔読んだなぁ、コレ
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【一番は】アヤ、レオナ(´д`)ハァハァ×10【リョウトですが】
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「エイター!そっちの箱持ってきてもらえるかー!?」
「これっスかー?了解!」
人もまばらなハガネの格納庫に、金槌の音が小気味よく響いている。
金属やら電気やらの多い格納庫にしてはえらく朴訥で牧歌的な音は、およそ格納庫には似合わないものだ。
「……なんだろ」
たまたま格納庫からの音を聞きつけてやってきたのは、リューネと模擬訓練で一戦やらかした後のリオだった。
僅差で勝利を収め、ほくほく顔の彼女はリョウトに報告(自慢とも言うが)しようと急いでいたのだが、
今日はほとんどのクルーに休みが与えられているにもかかわらず、リョウトはあいにくの留守。
彼の姿を探してうろついていたところ、この音を聞きつけたのであった。
「大尉ーっ、ホントにこんなことに格納庫使っていいんですかー?」
「いいんだよ!ちゃんと艦長に許可ももらってるって言っただろうが」
リズムよく繰り返される金槌の音の合間合間に聞こえてくる声は、
まず格納庫にあるロボット群とは縁のない人々のものだ。
「(一体何をしてるのかしら)」
そもそも今日は休むべき日だ。休まないのは間違ってる!
……と自分のことはさらっと棚に上げ、せめて一喝とリオは勢い込んで格納庫に突撃する。
「ちょっとテ――……」
「あら、リオ曹長」
「え?」
さあ一喝、と言うところで横合いから声を掛けられ、思い切りつんのめるリオ。
一喝する気力を殺がれ、これまた間近に聞くはずのない声に振り返ると、
そこにはヒリュウ改の艦長、レフィーナが立っていた。
「レフィーナ中佐!?ど、どうしてハガネに……あっ、いえ、すいません!お見苦しいところを」
「ふふ、いいんですよ。私もお休みだからここに来ているんですし、堅苦しいことはなしにしましょう?」
にっこりと笑うレフィーナを前に、そういえば彼女と自分は一つしか年が違わない事を思い出す。
人間って、不思議だ。ハガネの副長テツヤは逆に、自分と一回り近く年が違うようには見えないのに。
そんなことを思いながら、リオは改めて階下の格納庫を見下ろした。
「え、と。中佐達は、ここで何を?」
傍目には、眼下に映る男達が何をしているのか理解できない。
確認できるのはどうやら無理矢理手伝わされているらしいエイタと、当事者らしいテツヤとリョウトの三人。
ぶつくさ言いながらいくつもある工具箱を出し入れするエイタにあれこれ指示を出しながら、テツヤが金槌を振るっている。
リョウトは、どうやらテツヤが作っているものを押さえたり、釘を出したりと雑用らしい。
ごく普通の家庭で見れば、ごくありふれた日曜大工の微笑ましい光景だが、何度も言うようにここはハガネの格納庫。
日曜大工の似合う場所ではない。
しかも、日曜大工などして何に使えるかというと甚だ疑問だ。
それらを口調と眼差しとに目一杯込めてリオが尋ねると、これもまた華やかな笑顔でレフィーナは応えてきた。
「今日、ハガネとヒリュウ改のブリッジクルーで朝食をご一緒したんですけど……
そのときに小物が多くてなかなか部屋が片づかないという話をしたら、
大尉があり合わせのものでよければと棚を作ってくださることになったんです」
「棚を?大尉が?」
「ええ。結構、そういうのお好きなんだそうですよ?」
意外だ……と思う反面、なんとなく分かる気もする。
リオがブリッジにいたときも、テツヤの印象は堅苦しい上官というよりは面倒見のいい隣のお兄さんだった。
まあ、もともとハガネのブリッジクルーが親しみやすかったのもあるのだが。
「それで、エイタとリョウトくんも?」
「そう……ですね。私がここに来たときは、もうお二人ともいらっしゃいました」
「う~ん……」
リョウトはともかくとして、エイタはまず間違いなく無理矢理手伝わされているのだろう。
それが見抜けない辺り、レフィーナもどこかヌケている。
男ってそこがいいのかなあ、などとどうでも良いことを考えるリオの傍ら、
レフィーナは作業を続ける三人を――正確に言うと棚作りに勤しむテツヤを――見下ろし、微笑ましげに笑った。
「でも……ふふ、なんだかああしていると三人仲のいい兄弟のように見えますね」
「まあ、三人とも日本人ですしねー」
正直、エイタとリョウトが兄弟だとは思いたくない。
胸中複雑な想いはしつつも、眼下の光景には何となくリオの口元も緩む。
いつも緊迫した作戦中には、絶対に見られない光景だ。
内気なリョウトが楽しそうに誰かと作業をしている姿を見ているのは、妬けてくる反面うれしさもこみ上げてくる。
「やっぱり、男の子は男の子同士の方が一緒にいて楽しいのかなぁ。リョウト君、すっごく楽しそう」
「あら、そんなことありませんよ?リオさんといるときも、すごく楽しそうじゃありませんか」
「えっ?そうですか?」
それまで冷静に受け答えをしていたリオの顔が、爆発的に紅く染まった。
同時に、思いがけず大声が格納庫に響き渡ってしまい、階下の男性陣が一斉に顔を上げる。
「あ……リオ。リューネとの勝負は終わったの?」
「う、うん。一応、勝ったよ」
「やったじゃないか、初勝利だよ!」
ぱっ、とリオが思った以上に喜びを見せるリョウト。それを茶化すように倉庫からエイタが声を張り上げる。
「リオ~、何戦目で初勝利だ~?」
「うるさいわねっ!い、いいじゃない何戦目だって!」
「まあ、ともあれリオもようやく一人前のパイロットの仲間入りだな。
……ふう、これでよし、と」
それまで絶え間なく続いていた金槌の音がぴたりと止んだ。
満足そうな顔でどっこいしょと腰を上げるテツヤの足下には、簡素ながらもしっかりした木製の棚が出来上がっている。
「へぇ、大尉って意外と器用なんだ」
「意外とって何だ、意外とって。俺はこう見えても手先は器用だぞ」
「性格は不器用じゃないですか。ねっ、リョウト君」
「え……そ、そうなんですか、大尉」
「俺に聞くなよ……ああもう、どうせ甲斐性なしですよ」
「そこまで言ってませんって」
似たもの同士の男二人、困ったように顔を見合わせて唸る。
こうしていると、リョウトとテツヤなら本当に兄弟と言って通じるかも知れない。
あまりの微笑ましさにくすくす笑い出すリオとレフィーナ。
「り、リオ……何も笑うことないじゃない」
「ごめんね、何か二人とも可愛くってさ。大尉、それで完成ですか?」
「うん?ああ、一応完成といえば完成だが……
戦艦の中とは言え、ちょっと女性の部屋に置くには味気ないよなあ」
木製の棚は一見すれば素朴で、それはそれでいいかもしれない。
しかし、実際レフィーナの部屋を見てみないと分からないが、
年若い乙女の部屋に置くには少し色気が足りないようにも思う。
作った棚を掲げ、しきりに唸るテツヤに勢いよくリオが手を挙げた。
「じゃあ、私が色をつけます!こういうのは、同じ女の子の方が分かるだろうし」
「そうか?あ、でもここにある着色剤は金属用しか……」
「僕が薄めて調整しますよ。リオ一人に作業をやらせるのも気が咎めますし……
大尉とエイタさんは戻っててもらっても」
リオに倣ってか、ごく控えめにテツヤの隣でリョウトも手を挙げる。
いや、手を挙げる必要はないんだが、
と口の中でもごもご呟いてからテツヤは倉庫内で道具を片付けているエイタに声をかけた。
「エイタ、もういいぞ!」
「えっ、いいんですか?」
格納庫隅から、埃まみれのエイタがようやく顔を覗かせた。
がらくたの山と化した倉庫から這いだしつつ、文句を言うのも忘れない。
「全く、大尉は人使いが荒いというか、こっちの都合も……」
「分かった、お前の苦労はよぉ~っく分かったし、非常~に助かった。
ご褒美にデッキでユン伍長がお茶を入れて待ってるようだから、お前はご馳走になってこい」
「マジですか!そ、それじゃあお先に……」
先程までの不機嫌ぶりは何処の空。
ご褒美と聞いてにわかに活気を取り戻したエイタは、
レフィーナに一礼するのもそこそこに格納庫を飛び出していく。
やれやれと肩をすくめてそれを見送ってから、テツヤは揃えた道具一式をリョウトに引き渡した。
「一応、ここを借りるときに俺が責任を持って見てるって約束してるから、俺は上にいる。何かあったらすぐに呼ぶんだぞ」
「はい。まあ……棚に色をつけるくらいで何かあったら困るんですけどね」
「そりゃそうだ。ま、規則は規則だから……悪いな、二人きりにしてやれなくて。
俺たちはいないもんだと思って上手くやれよ、リョウト」
「あ……はい。大尉も、頑張って」
折角弟分を励まして、格好よく決めたテツヤがリョウトの一言に最後の最後で躓いた。
上から駆け下りてきたリオが、自分が足をかけたものかと驚いて振り返るが、
テツヤは「大丈夫だ」とひらひら手を振って上へと上がっていく。
「リョウト君、テツヤ大尉に何か言った?」
「えっ?ううん、ちょっと、ね」
曖昧なリョウトの答えにリオは少し首を傾げたが、
それとなく刷毛とペンキ缶を渡された後は何を疑問に思ったかもすっかり忘れてしまうのであった。
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「お疲れさまでした、大尉」
「あ……中佐!も、申し訳ありません。こんなところでお待たせしてしまって……」
「いえ、構いません。私の我が儘を聞いていただいたのに、私一人部屋で待っているわけにはいきませんから」
格納庫の上を走る回廊では、レフィーナがテツヤを出迎えるべく待っていた。
手には、ご丁寧に冷たいジュースの缶とタオルまで用意されている。
「これ、先程クルーの方が届けてくださったんです。どうぞ」
「恐縮です。あっ、自分はまだここで作業を見ていなければならないので、
何でしたら先に戻っていただいても結構ですよ?」
「あの……私がいたら、お邪魔ですか?」
「いっ……いえっ、とんでもない!」
テツヤはあくまで申し訳なさから勧めたのだが、レフィーナにはそう受け取られなかったらしい。
寂しそうな上目遣いで見上げられて、テツヤは顔を真っ赤にしながら首を振る。
「じ、自分などでよろしければ、その、お話でも」
「ええ、喜んで」
寂しげな表情から一転、レフィーナの顔にいつもの華やかな笑顔が浮かんだ。
あまりに鮮やかな表情の変化につい見とれつつ、テツヤは近くの手すりに寄りかかる。
それに倣って、レフィーナも彼のすぐ隣に落ち着いた。
「ふふ……とても楽しそうでしたね、大尉」
「そ、そうですか?いや、お恥ずかしい……」
「そんなことありません。まるで本当の兄弟のようで、うらやましかったです」
「兄弟……まあ、似たようなものですから。中佐だって、ユン伍長と姉妹のようですよ」
戦友というのは、深かれ浅かれそんなものだろう、とテツヤは胸中で付け加える。
同世代なら兄弟、年の差があるならば親子。
自分とリョウト、そして自分とダイテツの関わりを省みて、つくづくそう思う。
「この艦には若い連中が多いですから……差詰め、自分が長男ってところですか」
「ふふ、頼れるお兄さんでいいじゃないですか」
階下では、ようやく色が決まったのかリョウトがペンキを手頃なバケツに汲み変えていた。
リオは刷毛を片手にやる気満々で棚と向かい合っている。
それを二人で微笑ましく眺める眼差しは、確かに肉親のそれによく似ていた。
リオがリョウトに細かく色の指示を与える声、その合間で会話が途切れてしまった事に気付いて、
テツヤが自分の腰をとんとんと叩く。
「しかし、若い連中は元気ですよ。自分なんか、これだけの作業なのにもう腰に来てて。もうトシかな」
「まあ、そんなこと……大尉だって、ダイテツ中佐の半分しか生きておられないんですから……怒られちゃいますよ?」
「はは……ごもっともです」
今も少し動けば仄かな体温すら感じられそうな至近距離にいながら、
どうしてもテツヤが一歩引いてしまうのはひとえにその年の差と階級の差にあるだろう。
階級はレフィーナの方が二つ上。しかし、年はテツヤの方が十も上だ。
普段意識することはないが、レフィーナは今眼下で作業をしている二人にほど近い年であり、
自分は年で言うならむしろあの教導隊に近い。
その年の差を――未だ二十歳にすらなっていない若者の中でただ一人、
三十路を目前にした自分を、この場で嫌と言うほどテツヤは見せつけられていた。
「(そうだよな……俺、もうすぐ三十路なんだよな……)」
自分で話題を振っておいて、一人落ち込んでいるのだから所謂自爆というやつだ。
急に深々とため息をついてしまったテツヤを、レフィーナが不思議そうに覗き込む。
「大尉?」
「うぉっ!あっ、いえ、すいません。
その……作業の間、中佐はお暇ではありませんでしたか?ここには何もないですし……」
ばくばくはね回る心臓をどうにか押さえつけ、のけぞりかけた体勢を無理矢理戻してテツヤは強引に話題をすり替えた。
口が裂けても、眼前に現れたレフィーナの顔に思い切りときめいた、などとは言えない。絶対言えない。
ましてや、こうしている間も年頃(をちょっぴり過ぎたと自称しておく)の男なりに
アレコレしてみたいと一瞬の間に妄想してしまったなどと思い返すのも恥ずかしく。
耳の間近に跳ね回る鼓動の音を聞きながらテツヤは平静を装ってレフィーナを見下ろした。
幸い、レフィーナは一瞬のうちにめまぐるしく展開されたテツヤの胸中になどさっぱり気付かず、笑顔で首を横に振る。
「いいえ、そんなことありません。私、ああいう風に人が何かを作り上げていく作業って、
見るの好きなんです。何だか、魔法みたいで」
「魔法……ですか」
再びリョウト達の方を見てみると、棚は着実に色づけされていた。
いかにもリオの趣味らしく堅実ではあるが、
どうやらリョウトの意見も反映されているらしく堅実さの中に柔らかなデザインが伺える。
合作というのも、なかなかに微笑ましい。
どれもこれも、やろうと思えば誰でもできることではあるのだが。
「自分の手は、魔法使いの手には見えませんけどね」
少し煤けた手袋を外し、しげしげと自分の手を眺めるテツヤ。
先程の作業で金槌を握り続けたせいか、少しマメが出来ている。
実際に操縦桿を握っているパイロット達に比べればましな方だろうが、
やはり男性らしくその手はごつごつと骨張って荒れていた。
とても、魔法使いの手とはほど遠いシルエットにテツヤは苦笑を浮かべる。
「それに、魔法使いなら腰を痛めて棚を作ることもないでしょう。ちょっとうらやましいかなぁ」
「ふふ……でも、私は魔法使いの本当の魔法より……」
外気に晒されたままの手に、そっと白い繊手が重なった。
まるで愛おしむように、そっと両の手でテツヤの手を包み込んで
――それでも包みきれないくらい、彼女の手は小さかったけれど――レフィーナは囁きかける。
「大尉のこの手の方が、ずっと魔法だと思います。
だって、魔法使いでもないのに、あんな風に素敵なものを沢山作れるんですから」
今までテツヤが見てきた中で、掛け値なしに一番の笑顔だと断言できる。そんな、無邪気で屈託のない笑顔だった。
それまでぎくしゃくしていたもの、全てをその笑顔に攫われて、テツヤもレフィーナの手を自然と握り返す。
「こんなちっぽけな魔法でよければ、いくらでもお見せしますよ」
「楽しみにしてて、いいのですか?」
「はい」
今世紀初登場堂々第一位のチャンス。
まさしくこれ以上ないシチュエーションに盛り上がりも最高潮。
テツヤ=オノデラ、三十路を目前にして彼女いない歴×年の歴史に終止符を打つ瞬間の到来か!
しかし、世の中そう上手くいかないのが現実というものである。
「レフィーナ中佐ぁ~、こんな感じでどうですかー!?」
がつーーん。
「――――ッッ!」
現実は、リオという少女の声を取ってテツヤに降りかかってきた。
急激に現実へ引き戻された弾みに、未開封のジュース缶がテツヤの足の小指を直撃する。
やたら鈍くて重たい音を立てて転がるジュース缶、悶絶するテツヤが思わず手を振りほどくのと、
レフィーナがリオに注意を取られるのとはほぼ同時だったのが幸いか。
「だ、大丈夫ですか、大尉……」
階下から聞こえたリョウトの心配そうな声に、無言でがくがくと頷きながらテツヤは痛みか悔しさか、
どちらか分からないがしょっぱい涙を一粒零すのであった。
合掌。
――その後。
出来上がった棚は、塗料を乾かす為に半日格納庫へ放置された後、
無事にレフィーナの部屋へと届けられた。
見事に彼女の私室のデザインとしっくり馴染んだ其処には、
あの戦争中も、そして戦争が終わった今も同じものが置かれている。
「……もうすぐ地球です」
地球を離れてからどれくらいが過ぎただろうか。
思ったほどに、時間は経っていないようにも思うし――ものすごく待ち焦がれたような気もする。
「約束……覚えてますか。それとももう、他に魔法を見せる人を見つけてしまいましたか?」
カレンダーに日々付けられていく印は、懐かしい仲間に会うためのカウントダウンか、
それともあの人に会うまでのカウントダウンか。
それは、付けている彼女本人にも分からない。
それでも、彼女はその日の到来を待ちわびていた。
「私は……早くあなたに、お会いしたいです……」
窓の外に、蒼く輝く地球が見えてくる。
そこにいる、ささやかな魔法使いに出会えたなら、まず自分は何を話そうか。
そして、どんな風に伝えようか。
地球とイカロス、その遠い距離の間に育んできた想いを。
「……大尉……」
レフィーナの万感の思いを込めた囁きを受け止めるように、
棚の上では写真の中のテツヤが色褪せぬ笑顔を彼女に向けて静かに佇んでいた。
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