419 :名無しさん@お腹いっぱい。 :2006/03/20(月) 01:53:49 GLfNiqFO
OG3期待でヘンな電波受信したので書いてみた
Dキャラでてるんでダメな人はスルーで。
場所は滅多に人も通らない艦橋通路のはずれ。
「どうすっかなぁ…」
すっかり暗くなった外を窓ごしに眺めながら、困り顔で呟いたのはまだ幼さを残す少年。
誰に聞かせるわけでもない独り言は再び彼の口をついて出た
「どうすっかなぁ…」
「困りごとか」
「うわ、だ、誰?」
気配も感じなかったのに背後から声をかけられて慌てる少年。
「私だ、アラド・バランガ」
「ラキさんッスか。まったく気配に気付かなかったんでびっくりしたッスよ」
音もたてずそこまで近づいていたのは、長身で細身で色素の薄い女、グラキエース。
皆からラキと呼ばれる彼女は、人ではない。
無遠慮にアラドの慌てた仕草を観察し、そのしばらく顔をまじまじと見つめたラキは暫く考えて口を開いた。
「おなかがすいた、という困りごとではないようだな」
「俺も年がら年中ハラペコって訳じゃないッスよ!。まぁでも今目の前に何かあったら食いますがー」
食欲旺盛なことだ、とラキは軽く笑う。
その邪気のない笑みにつられ、暫く会話を続けてみようとアラドは今の悩みの種を相談してみることにした。
「ラキさん、ちょっと聞いていいッスか」
「何か。解決はできないかもしれんが話ぐらいならいくらでも聞くぞ」
「ホワイトデーって、なに貰ったら女の人って嬉しいもんですかね?」
「…それはバレンタインのお返しというイベントの事だな。もう過ぎたと記憶している」
「実はその日、食い放題とか肉特売セールとかあってゼオラと逢えなくて。それからずっとアイツおかんむりなんスよー」
「女の人、という一般論は私にはわからないな。ホワイトデーの経験がそもそも少ない」
「ラキさんは何もらったんス?」
「私はジョシュアから特製のケーキとココアを貰ったな。嬉しかった」
「ジョッシュさん料理うまいッスからねぇ」
「味ではない。ジョシュアが私を特別扱いしてくれるというその行為と感情を感じられるのがなにより嬉しいのだ」
無論ケーキは美味かったが、とラキは続けた。
グラキエースとジョッシュはシュンパティアというシステムで精神がリンクしており、喜怒哀楽や感情の変化が連動して相手にも伝わるという。
それって、どんなカンジなのかな、とアラドは思った。
俺とゼオラにもそういうシステムあればゼオラにもちゃんと反省してるというということは伝わるんじゃないだろうか。
流石に今回はマズった。ゼオラ本気で怒ってたもんなー。
「む」
「どうしたんスか?」
「ジョシュアが困っているようだ。…加えて、微妙な嬉しさと恥ずかしさも感じるな、何事だ」
「なんッスかね、探します?」
「手伝ってもらえると助かる」
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探し人であるジョッシュは休憩室にいた。女と2人で。
困り顔のジョッシュに後ろから抱きつくようにくっついているのはエクセレン・ブロウニング。
髪や頬に手を伸ばしてジョッシュをいじって遊んでいる。
「な、なにやってんスか2人で!」
「ジョシュア、なにをしている」
「ああ…ラキ、アラド、エクセレン少尉に俺から離れるように言ってくれないか」
「んもうジョッシュ君ったらイケズねぇ。こんな綺麗なお姉さんを無理やり引き剥がそうなんて」
冗談めかしてけらけらと笑うエクセレンはただのスキンシップのつもりらしい。
手荒にエクセレンを引き剥がさないのはそれがかえって行動を煽るとわかっているからか、彼独自の処世術なのか。
「エクセレンはなぜジョシュアに触れているのだ」
「興味よ、興味。朴訥で男らしいのに意外と世話焼きで、ジョッシュ君ってうちのダーリンと通じるじゃない?髪質も近いのよ~」
「分の悪い賭けはしないとか全然違うじゃないッスか」
「細かいことを気にしてるとゴジラみたいにおっきくなれないわよアラド君」
「なりたくないッス!」
あら胸囲もおなじぐらいね、とジョッシュの胸に手を回すエクセレン。
それを見たグラキエースの目がキツくなる。
「…なんだ、このもやもやした嫌な感覚は」
「ラキに負の感情がでてる。いい加減離れてください」
「あららラキちゃんジェラシー?ごめんしてね」
ジョッシュから身を離し、こんどはふわりとグラキエースの傍に座る。
優しく謝りながら頭を撫でるエクセレンと、されるがままのグラキエース。人に触れるのが好きなようだ。
「エクセレン、ジェラシーとはなんだ」
「わぉ、知らないの?」
「私は闘いに関わる以外の感情を知ったのはジョシュアと一緒になってからだ。説明してくれると助かる」
「ん~、そうねぇ、ジェラシーとは愛し合う男と女のー」
「ダイレクトな描写は刺激強いッスよ」
「申し訳ないが簡潔に正確に説明してもらえますか」
平然とセクハラトークに持っていこうとするエクセレンを牽制する。
たしかに世間知らずの極みであるグラキエースは天然を上回る純粋培養だ。
間違ったことを教えられてもなんの疑念もさしはさまず鵜呑みにするだろう。
いろいろ大変そうッスね、と声をかけるアラドに対し、そうでもないさ、と答えるジョッシュ。
そんなやり取りの間にエクセレンの正しいジェラシー講座は終わったようだ。
「なるほど、理解した」
「ラキちゃんとジョッシュ君みたいにお互いの感情がわかれば恋人同士なんてうまーくいくのにね」
「エクセレンはキョウスケの気持ちを信用していないのか」
「信用してないって訳じゃないけど…ときどき不安になるのよ。私がこんなに愛してるのに彼、何も言ってくれないから」
「エクセレン少尉は愛情表現に歯止めがないだけだと思うっス」
「ダーリンは照れ屋さんだからあまり口にしてくれないのよね~。分かっていても言って欲しいものなのよ、確認だもの」
「はぁ、そんなもんなんッスか」
「ダメねぇボウヤ達。気恥ずかしさを堪えて言ってくれるから、なおさら嬉しいものなのよん」
「…俺はキョウスケ中尉に同調しますよ」
突如、グラキエースが立ち上がってジョッシュに歩み寄った。
「好きだぞ、ジョシュア」
「…突然どうした、ラキ」
「わぉ、ラキちゃん攻めモード?」
「私はお前が好きだ。お前は私をどう思っている」
「俺の気持ちはリンクしてるから分かるし知ってもいるだろう。なんで突然そんな事を聞く」
「感覚も感情も分かる。だが聞きたい。どうなのだ、ジョシュア」
「…こんな衆人の前で言わせる気か、勘弁してくれ」
グラキエースにつめよられ、額に手を当てて顔をそらすもその手をとられ、顔を向き合わせられるジョッシュ。
急展開の事態に驚いてどうしていいか分からないアラドと瞳を耀かせてウォッチモードのエクセレン。
「言ってはくれない、のか」
グラキエースは口を閉ざしたジョッシュに希望の言葉をかけてもらえず、失望した態でうなだれる。
「私がお前をこんなに想っているというのに」
かみしめたような声で胸に頭をよせ、耐えるようにシャツを握ってくる姿についに恋人は陥落した。
「…悪かったよ、俺はお前が好きだし、いつもお前の事を想っている。だからそんな負の感情を持つな」
「…そうか、聞けて安心した。嬉しいものだな。これ以上ないぐらい幸せな感情が湧く」
いい空気の2人を感心しながら眺める2人の聴衆。
「意外とオトシ上手なのねぇラキちゃん。お姉さん感心しちゃうわん」
「見ててちょっと感動したッス」
「お前の言うとおりだなエクセレン。ジョシュアの気持ちは分かっていたが、言葉で聞けてこれほど嬉しいものとは思わなかった」
ラキはそう言って幸せそうに恋人に身を委たまま、その顔をゆるくアラドにむけた。
「アラド、言葉だ」
「へ?」
唐突に話題の中心を自分に振られ、なんの事かまったく頭がついていってない。
「ゼオラへのホワイトデーのお返しを考えていたのだろう」
「あ、ああ、お返しを?って言葉で!?」
「んん~?なにか有るわね。洗いざらい白状してもらうわよん!」
---------------------------------
事の顛末をエクセレンに根掘り葉掘り聞き出され、ようやく解放されたアラドはゼオラの部屋の前に来ていた。
「…俺だよ。はいるぞ、ゼオラ」
持っている合鍵でドアをあけ、ゼオラの自室に入る。
部屋の主はベッドに座り端末に向かってキーボードを叩いていて、入ってきた人物を確認しようともしない。
「なにか用?」
「…悪いと思ってる。ホワイトデーのさ」
「今更プレゼントでご機嫌とろうなんて通用しないわよ」
「そうじゃねぇって。謝りにきたんだ」
普段とは違う神妙な空気に気付いたのか、ゼオラもモニタから目を離してアラドに目を向けた。
「隣、いいか?」
「いちいち聞かなくてもいいわよ…はい」
すこし横へつめ、アラドが座るスペースを作る。
「何日も送れたけど…プレゼントさ、」
「謝りにきたんじゃないの?」
「それもかねてるんだよ、ホラ」
そういってアラドが差し出したのは一通の手紙。
ゼオラは怪訝な顔のままそれを受け取り封を切ったが、文面を開く前に確認のように尋ねた。
「…今読んでいいのかしら?」
「逃げ出したいぐらいだけど、それじゃダメだって釘さされてるからさ。今読んでくれ」
「なんなのよ、もう…」
普段より素直なアラドに拍子抜けし、ゼオラは半ば諦めたように文面に目を通し始めた。
億劫さを隠そうともしないその態度も、手紙を読み始めて数秒で先ほど端末へ向かった姿の数倍真剣なものに変わる。
そこには、普段は言ってくれないアラドの素直な感情が書いてあった。
スクール時代のこと。一緒に育った今までのこと。調整され敵対していたときの自分への想い。
そして手紙の最後の文章は、ゼオラにこれ以上ないぐらい響いた。
『ゼオラとは今までずっと一緒だったし、これからも当然そうだと思ってる。
俺にとってはお前がいるのが自然で、普通の日常なんだ。
だから本当は喧嘩とかしたくないし、ここ数日はものすごく辛かった。
恥ずかしいから全然口にはだせないし俺の態度からはそう見えないだろうけど、俺はお前が好きだから。
今までも、これからも、お前は俺が守る。 アラド・バランガ』
目の前が滲む。
なんの自覚もなしに涙が溢れる。それを見て慌てるアラド。
「わ、悪い!なんか気を悪くすること書いてたならあやまー」
「違うわよバカ!」
涙も拭かないままアラドの首に手を回すようにして抱きつき、ベッドに倒れこむ。
アラドは突然の事態に状況がつかめないようだ。
「ゼ、ゼオラ!?」
「違うわよ…違うの、嬉しいの」
倒れこんだ体を起こし、アラドを組み敷くように顔を覗き込みながら、微笑んで涙を拭う。
「…ゼオラ…」
「私も好きよ、アラド。好き。大好き」
「悪かったよ、俺はー」
「ずっと不安だったのよ。アラドを好きなのは私だけで、アラドは私がアラドを好きなほど私を気にかけてないんじゃないかって」
「悪ィ…」
「謝らなくていいわ。…ねえアラド、私のこと好き?」
「言わせるのかよ!恥ずかしいんだ、勘弁してくれ」
「私はアラドが大好きよ。ねぇアラド」
「マジかよ…」
「好きよ、アラド」
「あー、もう!好きだよ!悪いかよ!自覚なかった頃からずーっと好きだったって!」
「嬉しい!」
ホワイトデーの貸しをナシにして余りある進展。
自分の口にした言葉の余りの気恥ずかしさに真っ赤になっているアラドの口にゼオラはそっと唇を重ねた。
「いっつも不安なんだから…たまには、言ってよね」
Fin
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