......で、連投気味スマソ
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アル=ヴァンとカルヴィナの比重が結構大きくなってしまって、カルビスレとどっちに投下すべきかかなり悩んだけど、総合的に一番登場してるのは姫様の方なんでこちらに。
◇ ◇ ◇
「ふぅ......」
ため息一つ。執務時間の終了である。
「疲れました......」
ぐたーっとテーブルに伸びるシャナ=ミア。
「お疲れ様でした、姫様」
騎士口調で隣に立つ統夜。
「統夜、疲れたので私を寝室まで運んで下さい」
なんて、言ってみる。
「いや......風呂にも入らないで寝るつもりかい?シャナ=ミア」
「統夜、呼び方」
顔だけこちらに向けて、不満顔で言われた。
「う、ああ......けどシャナ、どのみち、侍従さん達が来るんだ。着替えのためにまた立たされるぞ?」
「たまには暴君にもなりたいんです」
(暴君って......)
少々呆れながらも、ならばとすっと腰を下ろす。
「え?と、統夜!?本気ですか!?」
「どっちなんだよ......やれっていったのは君だろう。ほら、首に手を回して」
「きゃ......!」
統夜の右腕がシャナ=ミアの背中に回っていて、左腕は膝の裏に当てられていた。
(こ、これは......)
名実共に、見事なほどお姫様だっこであった。
生物としての形がそう異なるものではないフューリーに置いても、お姫様だっこはお姫様だっこなのであった......!
......フューリーにも、もちろん御伽噺は存在する。
悪い魔法使い、悪い竜。
囚われた姫君、奪われた平和。
それを奪い返す騎士や勇者。
なんだか、自分がそんな登場人物になった気がした。
「あ、あの......統夜?」
どきどきと、自分の心臓の鼓動が五月蝿い中、おそるおそる声をかけると、何故かその顔は何やら苦渋に満ちた顔をしている。
(......何なのかしら)
つい、追求は避けたくなって、そのままだんまりで運ばれて、寝室へ。
ゆっくりと、寝具へ自分を下ろした統夜が、やはり苦渋に満ちた表情のまま、口を開いた。
「......ゴメン、シャナ。こんな事を聞くなんておかしいのは判ってる」
「......?」
むしろおかしな事を言い始めた彼の方こそが心配になってくる。
「女性に聞くのが、あんまりにも失礼なのも理解してはいる!いるけど......」
「はぁ......」
「......体重、いくつ?」
嫌な沈黙が場を支配した。
「......本当に失礼です」
恋人に尋ねる事ではない。さっきまでの嬉しいドキドキがどっかに行ってしまった。
「ゴメン」
素直に頭を下げられても......
しかし、これはあれか。さっきから統夜が微妙な表情をしていた原因か。
「一度しか言いませんからね」
耳元に口を近づけて、そっと告げた。
再び、沈黙。
「......そんなに、重いですか?」
「逆だよ!軽すぎるよ!」
ほとんど悲鳴のような声を上げる統夜。
「なんかもう、今にも倒れそうな気がして俺怖いよ!?」
「そんなことが、あったんです」
倒れそうなんて、失礼ですよね。と拗ねたように言いながら、紅茶をすすった。
「ふーん......ところで、あなたの体重って?」
茶会に同席しているカルヴィナが尋ねた。
因みに、アル=ヴァンも居るが、話題が話題なので居心地悪そうにそっぽを向いている。女性が体重の話をしているところに居合わせたい男など早々居はしないだろうが。
「35リオルです」
「リオル?」
「あ、フューリーの単位です。1リオルが......えっと」
「1リオルが、約1270グラムだ」
アル=ヴァンが補足を入れた。
「それじゃあ1リオルが約1,3キロとして......」
指折り数える。
「ちょっと立ってみてちょうだい」
「え?はい」
言われたとおりに起きあがる。
「ん......そうね。あなたぐらいの背なら、別に珍しくもないか」
でしょう?と頷くシャナ=ミア。ぷんぷんという形容が似合いそうな怒り方を素でやっている。
「なら、こう言ってやりなさい。自分が予想以上に軽かっただなんて、一体自分がどれだけ重いと思っていたのかって」
「それは、面白そうですね」
にっこり笑うシャナ=ミア。
「早速確かめてみます」
「......あまりシャナ=ミア様におかしな事を吹き込まないでくれ」
楽しそうに笑いながら、愛しの騎士の元へ向かう少女の姿が見えなくなってから、アル=ヴァンは呻くように言った。
「乙女心を理解していない騎士殿が悪いのよ」
フューリー特有のハーブを使ったハーブティーの香りを楽しみながら、ふとカルヴィナはアル=ヴァンを見た。
「......そうね。ここの騎士殿にも、一応聞いてみるべきかしら」
ビク、とアル=ヴァンの体が震えた。
「......何を、だ?」
「何度か抱き上げてくれてるけど、私はどうだったかしら?」
むぅ、と渋い顔をするアル=ヴァン。
これはあれだ。試されている訳だ。乙女心の理解度を
(しかし......)
正しい答えなんぞ有るんだろうか。『思ったよりも軽かった』なんて言えば先ほどシャナ=ミアに言った言葉がそのまんまやってくるし、かといって重いと言うわけにも行くまい。
「さぁ、どうだった?」
楽しそうに詰め寄るカルヴィナに、ますます苦渋の表情となるアル=ヴァン。
先程といい、女性の体重なんて男が立ち入って良い問題ではないのだと思うが......ん?
(......そうか。論点をずらせばいいのか)
「ほら、早く早く」
せっつくカルヴィナに、咳払いを一つしてから微笑みかける。
「そうだな。柔らかくて、抱き心地が良かったよ」
「あ......あのねぇ......オヤジくさい発言は止めてちょうだい」
予想外の方面からの切り口に、歯切れが悪くなるカルヴィナ。
「......そうか?済まんな」
そうは言いながらも、真っ赤になって照れ怒っているカルヴィナを、満足げにアル=ヴァンは見つめていた。
◇ ◇ ◇