「あの、本当にこんなので宜しかったのでしょうか?機械いじりは趣味の範囲なので、正直プロの目にかなうかどうか…それに、見た目も…」 その日、アスラン・ザラは非常に困惑した面持ちで、小型の球体をある人物に手渡していた。 「注文通りなんだろ?なら問題ないって。詳しいテストなんかはこっちでやるから気にしないでくれよ。ともかく、恩に着るぜアスラン!」 調子よく答えその球体を受け取るは、ミスリル屈指の狙撃手クルツ・ウェーバー。そして彼の手に握られてる球体は…どう見ても「ハロ」であった。 事の発端は数日前。クルツがアスランにこんな依頼をした事がきっかけ。 「俺もソースケの奴みたいにちょっとした軍事アイデア品を思いついたんだが、その試作を頼まれてくれないか?」 ソースケこと相良宗介軍曹の発案によって、ボン太君がミスリルの試作兵器になった事はナデシコ・アークエンジェル・エターナルの三隻同盟においては有名である。 その非常識な見た目とは裏腹に、テッカマンブレードとやレイズナー、ベルゼルートらと共にいち早く敵陣に突入してエース級の活躍を見せている。 これにはちょっとしたメカニズムがある。 はっきり言えば、戦場に似つかわしくないボン太君の容姿は相手によって「敵」と認識されないのだ。特にMSやASのAI、学習型コンピューターでは誤認識を起こす確率が非常に高い。それらのAIは戦闘経験によって敵と認識する対象を絞り込むようになる。銃を持ってる敵機、人間など。一方で民間人をターゲットしないよう丸腰の相手をあえて無視する様にも学習するのだが、ボン太君のようなぬいぐるみはまさに「無視の対象」な訳である。加えて明らかに浮いたその存在感、敵としてロックも出来ず、動揺してる間にロケットランチャーやサブマシンガンの餌食にされる訳だ。 …こういった理論的な事に加え、宗介のボン太君好きもあいまって実用化された機動兵器ボン太君。クルツの依頼は、いわば柳の下のドジョウな訳である。 そしてクルツが提案した内容…それは、「ハロによる多少の自律行動が可能な索敵兵器」であった。ハロのように愛くるしい機体であれば、相手に見つかっても「オモチャ」と勘違いしてもらって偵察のデータを失わずに済む、というのがこのプランの(表面上の)狙いであった。(どっかの世界では史上最悪の機動兵器であるが、このC.Eではあくまでアスラン自作のオモチャなのである。) 「お前、この前カガリにもハムスター型ロボット作ってやったって言うじゃないか。息抜きがてらでいいから俺にも一つ作ってくれよ。」 余談だがそのハムスター型ユニットは、何も知らずに彼の部屋にきたカガリ本人が踏みつぶしている。 「ま、まぁ確かにマイクロユニット製作は趣味ですから俺は一向に構わないんですが…」 アスランは非常に困惑していた。そもそもクルツがこの様な事に興味を示したのが驚きだったし(ナンパに精を出し、宗助を暗いと評してた故)、何でまた自分に協力要請をしてきたのかも不明だった。しっかり作りたいのであればミスリルの技術部や、それこそ宗助の知り合いの武器商人に頼めば良いのではないか? 「そう言うなよ。ボン太君みたいなハロの外見にこそ価値があるんだし、ハロで作る場合は生みの親のお前に頼むのが筋ってものだろ?」 結局こういう時にNOと言えない日本人の様な性格故、アスランはハロ型索敵機の製作に協力。仕上げてクルツに引き渡し、先ほどの会話に至る。 「クルツさん、例のブツは手に入ったのかい?」 めったに使う人のいないナデシコバーチャルルームより声が響く。 クルツはフッ、笑みを浮かべて答えた。 「当然よ。これから実地試験に行く…付いてくるよな?」 「グレイト!」 代名詞の掛け声とともに、二人の人物が中から出てきた。バスターのパイロット、ディアッカ・エルスマン。そして最初の声の主、マジンカイザーの兜甲児である。 「一度は銃を向け合えど!」 「ひとたび戦場を離れれば、エロを志す仲間と仲間!」 事の発端は例のハムスターロボ事件にて。アスランの持つ技術力の高さに目を付けたクルツがまず悪用する事を思いつく。あのテッサをして「露骨にエッチ」と言わしめる行動を躊躇なくする男である。悪知恵の回転は速い。風間がいない代わりにスケベ担当の甲児、意外に食いつきの良かったディアッカを誘い、計画を練り始めた。 「ハロ型例え見つかってもならラクスちゃんの所有物の一個って勘違いされてやり過ごせるんじゃないか?」 「グレイト!アスランのハロならサイズも小さいからぴったりだぜ!」 「解錠機能に高度な会話AIすら積み込めるなら映像の撮影ぐらい容易い…詳しい図面はともかく、とりあえずの機能はこれで万全だな。」 そう、女風呂を覗くための計画を… 「いやー、我ながら『アスランに依頼する』ってのが二重の意味で冴えてるぜ!メカの腕も、変に怪しむ心配もないからな!」 ハロを抱えて意気揚々と女風呂を目指す一向。先頭を行くクルツがこれからやることとは似ても付かないほどさわやかな笑顔で言い放った。確かにこの計画は綿密である。ボン太君という隠れ蓑を用意することでハロ型偵察機というものの不自然さを隠ぺいし、気弱な製作者本人に依頼する理由を「形のライセンス」と説明づける。万が一宗助がハロを気に入っていればそっちでは本気で実現しそうなプランであった。 「俺も影から見てたけどよ、アレ、将来詐欺かなんかに引っ掛かりそうなお人よしだよな!『君はお父上の事ばかり考えてはいけない』とか言われたらよ!」 あるある!と声をあげて笑う一同。しかしこの世界での2年後はどうか知らないが極めて近くな2年後に本当に引っ掛かるので困る。 「しかし何だ、確かに人数少ない方がいいが、結局お前ら誰も呼ばなかったのかぁ?意外と薄情だなぁ、お前ら。」 実は計画を実行に移す前、クルツは二人に「信用できる人物なら誘ってもいい」と言って、友人を誘う事を許可していた。 にもかかわらず、今日のこの日まで二人とも誰も誘わなかったのである。せめて豹馬ぐらい誘うものだろうとクルツは思っていたのだが… 「ああ、豹馬は馬鹿だからぺらっとしゃべりかねないしな!」 TFOを作れる方ならともかくこっちの甲児にだけは言われたくないだろう。 「宗介はアレだし、統夜の野郎も変なところで固いからなぁ。」 変なところが、ではない。以前一緒に旅行したとき、統夜は覗きに誘われたにもかかわらず結局宗介とゲームをしていた。クルツも甲児も気が付いていないが、その時に覗き防止のトラップを仕掛けたのは宗介とマオだけでなく、統夜も一緒だったりする。 「固いのはイザークも同じだぜ。アイツ、頭でクギが打てるぜ、絶対。」 キョシヌケガー!と激怒するのは請け合いである。アスランの前でこそ皮肉屋を気取っているがあれで熱血漢の紳士だ。 「…さて、選ばれた紳士諸君…たどり着いたぞ。」 大仰に言いながらクルツは足を止めた。楽園への門の前で。 大きく「女湯」と書かれたのれんのぶら下がるナデシコ温泉女湯の脱衣所の前。純情ボーイだと足早に去っていくこの場所にどうどうと陣取ってるだけで彼ら一行は十分怪しいのだが、今さらそんな事は気にしないらしい。 「グレイト。ターゲットが多いぜ!」 「いよいよ作戦決行だなクルツさん!」 甲児とディアッカが手を握って燃えている。その熱血の精神ポイントを他に回してほしいものだが。 「ああ…今日はとりあえず下調べだ。湯気に耐えられる…っていきなり注文すると怪しまれそうだったんでな。とりあえず脱衣所で様子見だ。」 言うなりクルツは、ハロを脱衣所の中に放り投げた。ハロはAI制御により撮影に適した場所まで自分で跳ねてゆく。 「後は、果報は寝て待てってね。俺の部屋でノンビリしてようぜ。」 数時間後、記録容量を使いきったハロはAI制御でクルツの部屋に帰還。いよいよを持って上映会と相成った。 この時間の為にアキトにスクリーンをかり、PCとプロジェクタをどうにか調達してきたのだ。 「は、早くしてくれよクルツさん!」 「グレイト!じらしだけは多いぜ!」 ソワソワしてる二人をよそに、クルツは落ち着いた様子でハロからメモリーユニットを抜き取りPCに接続する。データをロードし、プロジェクタに投影する手はずを整え準備完了。 「そう急くなよ…ほら、始まるぜ!」 まず最初にモニターに映し出されたのは、マオ、カガリ、リョーコの前線で活躍する「戦う女性」3人組であった。 「おお、マオさんにリョーコさんか!カガリは今後に期待としても残りの2人は期待できそうだぜ!」 この甲児の発言、本人がきいたら確実にダンベルで撲殺レベルである。が、こんなことをいったバチかどうか知らないが、次の瞬間映像の中のマオが驚くべき行動にでた。 「ぬあ!?」 思わず一同も声をあげる。なんとハロが隠れていたスペースにピンポイントでマオがカゴを置き、映像がほぼ映らないような状況に追い込まれたのである。ハロはある程度の自律性能があるため場合によっては場所を動けるが、今回は隠密を最重要課題においていたため。カゴに押し込まれてしまい動きが取れなくなってしまった。 「く、くそーマオの奴…!」 が、恨み事を言おうものなら何をしたか一発でばれてしまう。この怒り、どこに向ければいいのか。 「まぁ今回はテストってことだし、次回に置く場所を考えればいいって事にして、今日は女の子のぶっちゃけ話を伺うだけにしとこうぜ?」 こういう時にディアッカは切り替えが早い。露骨にエッチな2人と比べ、女の子を口説くこと自体に生きがいを感じているディアッカには「女の子のぶっちゃけ会話」も興味アリなのだろう。という事で、以下のパートでは、ご存知の方は「アルトネリコ2・真夜中の内緒話(お風呂BGM)」でもかけてくだされば幸いである。 「ふぅ…私も鍛えてるつもりだが、やっぱマオ曹長やリョーコには叶わないな。」 「当たり前だろ?アタシもマオも一応戦闘が職業なんだぜ?趣味で筋トレしてるだけのお姫様に負けるかよ。」 「む!そこまで言うか!?私だってルージュで一応前線に出てるんだからな!」 「オメー、そうやってアスランの足引っ張ってんだろ?」 「何だと!」 「この前だって、ブースターふかしすぎてグルグル回ってたところをフォローされてたじゃねーかよ!」 「あれは!私だって失敗することもあるし、たまたまアスランが近くにいたから助けに来てくれただけだ!」 「ハイハイ、リョーコもカガリをいじめない、カガリもいちいち突っかからない。せっかく亡国の姫って美味しい立場なんだから、もう少し猫かぶっときなさいよ。」 「そうそう。ラクスと比べたら圧倒的にガキなんだから、せめておとなしくしとけってんだ。」 「う…どうせ私は子供っぽいんだ。ラクスにだって負けてるさ…!ああ、負けてるとも!胸だって…」 『……』 「いやぁ、これを作った恩人でなければすぐさまアスランをボコしにいってるところだぜ!」 とても爽やか(イヤな)笑顔でクルツが言い放った。こめかみにはピクピクと青筋が浮かんでいる。 「ラクスちゃんの元婚約者ってだけでもうらやましいってのに…アスランの野郎…」 仮にも彼女もちでありながら時々それを忘れてるのではないかと疑いたくなる男、兜甲児。 「でもまぁ、ラクス・クラインとの婚約はプラントの取り決めだしなぁ。清く正しいデートしかしてなかったらしいし、アスランの好みはどっちかっつーと今の方だぜ?」 「ん?やけに詳しいなディアッカ。聞いたことがあるのか?」 「グレイト!俺はザフトアカデミーの夜のオカズ収集を一手に引き受けてたからな!」 その手の本の収集からイザークがやつあたりで壊した家具の修繕まで。サポートの鬼はこのころから既に頭角を現していたのだ! しかし、ディアッカに頭を下げてその手の本を受け取るアスランというのも想像しがたい。 「あいつの趣味は割と元気印系だったからなぁ。」 「へぇ。お坊ちゃん系に見えるからお嬢様の方が好みかと思ってたぜ…お、次のシーンだ。」 「前から一度お邪魔してみたいと思っていたのだけれど…やはりナデシコのレクリエーションは凄いわね。」 「名前も可愛らしいし、乗組員のメンタルにも気を遣う。ナデシコは素晴らしい艦ですわね。」 「えへへ〜なんか照れちゃいますよ〜!」 「のんびりかつやや電波系の声が2人とおっとり系…ラクスちゃんにユリカ艦長、あとはラミアス艦長ってとこか。」 「日本では昔から裸の付き合いっていって、お風呂で交流を深めるものなんですよ!」 「まぁ、日本の方は交流に積極的なのですね。」 「マオ曹長に聞いたけど、外にある露天風呂、というのもあるらしいわね。」 「はい!時期がよければ風が爽やかで気持ちいいんですよ!」 「西洋人からすると外でまで裸というのは少し気が引けるけど…」 「クルツさん…」 「言うな…」 悲しそうに呟く甲児とクルツを見て、ディアッカは頭に疑問符を浮かべた。一体今の会話に何の悲しい過去があるのか。 …その実ただ露天風呂をのぞき見しようとして返り討ちにされただけである。 「でも、広いお風呂というだけでここまで心が弾むなんて思わなかったわ。」 「そうだ!アークエンジェルも軍艦やめちゃったんだし、どっか無駄スペース改造してお風呂作りましょうよ!」 「素敵なアイデアですわ、ミスマル艦長。ラミアス艦長、せっかくですから『天使湯』なんて名前はいかがでしょうか?」 「そうねぇ…状況が落ち着いたらマードック曹長に相談してみようかしら。」。 これが後に「再びバレルロールしたらどうなるか興味が尽きない」戦艦が生まれた経緯である。最も、この世界でアークエンジェルが再び使われるかどうかは定かではない。 「天使湯かぁ…さすがラクスちゃん、いい事考えるぜ!」 「天使湯が完成の暁には、ハロの一つや二つあっというまに送り込んでくれるわ!」 「グレイト!ハロだけは多いぜ!」 まだ計画すら立っていないというのに次の狩場に向けて士気を高めるエロガッパ3人組。そうこうしてるうちにシーンがまた切り替わる。 「やたー!お風呂!お風呂!」 「出てからコーヒー牛乳飲んでいいですか〜?」 「二人とも!お風呂ぐらい静かに入りなさい!」 「良いじゃないのカティア。レクリエーションの一環でもあるのだから貴女も楽しみなさい。」 「もう、ミストレスは最近二人に甘すぎですよ!」 「こ、この声は!普段統夜の奴に独占されてるオルゴンクラウド巨乳4人組!?」 クルツが驚愕の声をあげるが、正確にはその表現は正しくない。元来の奥手に加え最近目覚めた騎士道のせいで、統夜と3人娘の関係は至極プラトニックである。夜を統べるだなんて名前負けだとは忍の談。中学生日記真っ盛りである。ついでにカルヴィナさんは恋人が現在敵軍を絶賛脱走中。やはり統夜に独占されている訳ではない。 「カティアさんカルヴィナさんメルアちゃんテニアの『揺れ』四天王が揃ってるのか!?くう…マオ曹長本当に余計な事を…!」 「…ところでさ、カティア…アンタ、また胸大きくなってない?」 「え!?そんな事は…」 「いいや!絶対大きくなってる!一体何したのさ!…ま、まさか統夜にm…」 「馬鹿な事言わないの!見せたことだってめったにないのにましてや…」 「ちょ、ちょっと!『滅多に』ってなんなのさ『滅多に』って〜!」 「こ、言葉のあやとか、不幸な事故よ!」 「わ〜!カティアちゃんずるいずるい〜。」 「メルアも茶化さないで!ミストレス、なんとか言ってください!」 「私は構わないわよ?可愛い妹分の恋の行方、気にならない訳ではないもの。」 「ああ〜んもう!」 「クルツさん、どっかから藁集めてきてれ。ディアッカは格納庫から釘だ。俺統夜から髪の毛採集してくる。」 負のオーラを満々に浮かべながらそう甲児はいった。顔が笑ってるのに目が笑ってないその表情は嫉妬故か。繰り返すようだがこの人は彼女もちである。 「甲児、そんなもん何に使うんだ?」 「ディアッカ。日本舞踊が得意ならお前も覚えとけ。日本の伝統的な呪術、丑の刻参りって奴をよ。」 「見られなくて悔しいのは分かるが二人とも落ちつけよ。特にクルツ、スナイパーが焦ってどうするのさ。次の機会に見られればいいじゃねぇか。」 「残念ながら次の機会は来ないぞ。」 その声にはっと3人が振り返ると…今まさに呪おうとした対象、紫雲統夜その人が半目でこちらを睨みつけていた… 「ちょ、ちょっと待て!ここは俺の部屋だぞ!?確かに鍵をかけたはず…」 そう、ここはクルツの部屋。そして用心に用心を重ねてちゃんとカギはロックしたはずだった…何故統夜がこの部屋に入ってこれたのか!? 「テヤンデー!テヤンデー!」 「ピンクハロにつけておいた解錠機能…まさかここで役に立つとはな…」 心底頭が痛いといった面持ちで手を額にあてつつ部屋に入ってきたのは…ハロの開発者その人であった。 「あ、アスラン!?どういうことだ!」 回想 エターナルにて 「という訳で、ウェーバー軍曹から頼まれた品なんだが…どうも俺は諜報活動用なんて大層なものを作る自信が無くてな…先輩にあたる相良軍曹にアドバイスがもらえたらと思ったのだが…」 真剣な面持ちでアスランは語っていた。エロ目的などとはつゆ知らず、彼は本気で諜報用機械を作ろうと四苦八苦していたのだ。しかしそれこそ元は趣味。ピンクハロのピッキングは冗談で付けたが、基本そんなステルス性能を高める品物だと作れない。そこで、ボン太君の開発者である宗介に助力を仰ぐべく、こうして相談に来たのだ。 「クルツが武器を作って商売…だと?あの男には一番縁がない話ではないか。」 当然、クルツと旧知の仲である宗介はその不自然さを一発で見破った。そしてそのまま話はマオの耳に入り… 「ああ、どうみてもエロ目的だね…いいかいアスラン、アタシの言う通りにするんだ…」 「という訳で、このハロにはマオ曹長のレーダーに反応するように発信機が埋め込まれていたんだ…まさかとは思ってたんだが…」 「何でそういう余計なところばっかり気がきくんだおまえは…!」 俗に言うところの「気が利きすぎて間が抜けた」状態である。…本当に偵察用であればその表現も適当ではないのだが。 やがて、はぁ、とため息をついているアスランを押しのけて、もう一人の人影が現れた。 「覗きの現行犯で逮捕。しかし幸いにも乙女の柔肌は覗かれず、ってところかしらね〜。」 「マオ…さてはあのカゴ、分かってやってたな!」 恨めしそうに言うクルツをしり目に、マオはふふんと得意そうに答える。 「あったりまえじゃない。さ、とりあえず全女性クルーの前で土下座と行きましょうか。…後ろにいる人数考えれば抵抗は無駄って、分かってるわね?」 処刑台にずるずるとしょっぴかれる三匹のエロガッパ。涙を流しながら、クルツは誰にも聞こえないほど小さい声で呟いた。 「お前ら…満足か?こんな(覗きの出来ない)世界で…俺は…イヤだね…」 「キャリプレーションをとりつつ10コンマ55mから11コンマ37mまでのノイズを除去…コリブリ修正…!」 「キラ君、さっきから何真剣にやってるんだい?」 皿を拭きながら、アキトが何やらPCをいじくってるキラに問いかけた。 毎度おなじみみなさまの憩いの場ナデシコ食道。就寝間際のこの時間は、さっきからデスクPCでファイルの修正をしているキラと店番のアキトしかいなかった。 「あ、いえ。『ちょっと手に入れた』ファイルがあったので『必要なところだけ』抜き出して整理してたところです。もう終わりました。」 「ふ〜ん。それよりさ、甲児君達の事は聞いた?」 彼らがのぞきをしたという事実はオモイカネなどを通じて全てのクルーに晒された。大部分のクルーは「アホな事を…」と呆れ、一部の男性陣は同士の散華に涙したという。 「ああ…お風呂を覗いたって聞きましたけど。」 「そうなんだよ…具体的なペナルティは発表されてないけど、うち艦長全員が女性だからペナルティ重そう…」 身震いをするアキト。同時にキラが非常に困った顔で答える。 「…関係ないと思いたいんですけど、ユニットリストからM9とマジンカイザーとバスターが削除され、代わりに武器がロッド一丁の量産型ボン太君が3体追加されてました。」 「……テッサちゃんがいなかった分300kgの火薬と一緒に魚雷から発射されたあと竹ヤリ特攻させられなかっただけ、ましか。」 皿を拭き終わったらアキトはエプロンを外すと厨房から出てきた。 「しっかしわかんないなぁ。そこまでして女の子の裸ってみたいかぁ?」 「(自分もエロゲ気質なのに…)ほら、アキトさんはミスマル艦長がいらっしゃいますから…その…」 言われると、アキトは真っ赤になって取り乱し始めた。 「ば、馬鹿!俺とユリカはそんなところまでは!あいつはいまだに赤ん坊がキャベツ畑でって…ってか、彼女なら甲児君だっているだろ!」 「あー。そう言えば…ほんと、どこから来るんでしょうね、あのエネルギー。…さて、僕はお暇します。アキトさんも早めに休んでください。」 「おう!お疲れ様ー。」 あとがき キラの一人勝ちだが、前回ドモンとの話でいじめすぎたのでこれでプラマイ0かと思う。 今回のJと原作以外の参考文献 スパロボ スクコマ2 機動戦士ガンダム00 1stseason SDガンダムGジェネレーションF スパロボZ スパロボD GBAソフト  ガンダムSEED 君と友と戦場で 機動戦艦ナデシコ ルリ AからBへの物語 アルトネリコ2 世界に響く少女達のメタファリカ